「犯人はあんたしかおらん」 餃子の王将事件、京都府警に“黒幕”と疑われた人物の正体とは?
及び腰だったのは“当局の都合”
こうした検証を積み重ねたものの“ゴーサイン”はいっこうに出なかった。実は、かくも長き年月を要した最大の理由は“当局の都合”だったというのだ。ある捜査関係者が明かす。
「プロのヒットマンである田中が現場でタバコを捨てたのは、罪を一人で被る覚悟だということ。実際に本人は、雑談以外は『差し控えます』と、取り調べに全く応じていない。ただし大東さんとの接点は確認されておらず、“指示役”がいるのは間違いない。指揮系統も解明し、そこにたどり着かなければ公判維持どころか起訴すら危ぶまれるため、これまで田中逮捕には及び腰だったのです」
検察庁の人事が影響
加えて、立件の可否を判断する検察庁の“人事”が大きかったという。
「今回の逮捕は、4月から大阪高検の刑事部長に就いている上野正晴検事によるところが大きい。かつて福岡地検小倉支部では工藤会壊滅に向けた“頂上作戦”の指揮を執っており、その上野検事が18年、京都地検に異動となったことで“慎重派”が優勢だった状況が変わるのではと、府警の捜査本部も期待を寄せていました。ですが、本人の意気込みとは裏腹に、大阪高検はじめ上級庁が、なかなか首を縦に振らなかったのです」(同)
そうした趨勢は上野検事の人事で一変したといい、
「高検の刑事部長とは、上司にあたる次席検事や検事長に事案を説明する役回りです。今回は最高検も含め、上野検事自ら“根回し”をしてコンセンサスを得ているため、存分に捜査に取り組めるわけです」(同)
頼もしい後ろ盾を得て、府警はついに大勝負をかけたというわけだ。さらには、
「複数人で事件を起こすのが従来の工藤会のやり口。今回の現場でも、見張り役など共犯がいた可能性は捨てきれません。工藤会は現在、トップとナンバー2がそれぞれ死刑と無期懲役判決で控訴中。頂上作戦の効果が出てきたわけで、沈黙を守る“鉄の掟”がほころび、内情を知る者が喋り始めても不思議ではありません」(同)
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