有原航平“争奪戦”で巨人、阪神の「絶対に譲れない」事情 学閥で岡田監督有利、原監督の対抗策とは?

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「有原はMLBに未練はないだろう」

 今季で米大リーグ、レンジャーズとの2年契約が終了した有原航平投手(30)が米国時間11月6日にフリーエージェント(FA)選手として選手会から発表された。MLBでの2年間の成績は右肩手術を受けたこともあり、3勝7敗、防御率7.57と低調だった。大谷翔平(エンゼルス)やダルビッシュ有(パドレス)のような剛速球がなく、多彩な変化球を持ちながらも際だった球種がないため、直球の平均球速が150キロを超えるMLBでは苦闘が続いた。【木嶋昇/野球ジャーナリスト】

「早大時代のロサンゼルス遠征でMLBに憧れを抱いたそうだが、メジャーで投げることが目標であって、メジャーで活躍するモチベーションはそこまで高くないと感じていた。来年31歳で、MLBでは契約が厳しくなる。来春のキャンプでマイナー契約を結び、招待選手としてメジャーキャンプに参加し、オープン戦でメジャー契約を目指す道もあるが、もうアメリカに未練はないのではないか」

 米大手マネジメント会社の代理人がこう指摘するように、日本球界復帰が現実味を帯びている。

 有原はNPBでの6年間で60勝50敗。2019年には15勝(8敗)を挙げ、最多勝に輝いた。前出の代理人によると、日本でなら毎年10勝は難しくても、年齢、実力的に少なくとも数年は先発ローテーションを守れる評価だ。NPB選手のようにFA移籍に伴う人的補償が発生しない利点もあり、早大の先輩に当たる岡田彰布新監督が就任した阪神、先発投手の補強が急務の巨人との争奪戦になるとみられている。

 巨人と阪神は10月20日に開催されたドラフト会議で、香川・高松商業高校の浅野翔吾外野手を巡り、1位指名で競合した。原辰徳監督が岡田監督との抽選の末、交渉権を勝ち取った。有原争奪戦で、巨人、阪神による今オフのウラ「伝統の一戦」の再戦となる。有原は絶対的エースに見込まれるほどの戦力ではないものの、両球団ともに一歩も引けない事情がある。

 巨人はストーブリーグの補強でも苦戦が予想されている。今季はチーム防御率がセ・リーグ最悪の3.69に沈んだ。特に先発陣は10勝したものの菅野智之投手は衰えが顕著で、今季12勝の戸郷翔征投手が勝ち頭と台所事情は苦しい。FA市場では阪神の西勇輝投手を調査しているもようだが、西は残留の可能性が高まっている。中日の松葉貴大投手ら目玉クラスではない投手も残留が決まるなど、「大補強」がかけ声倒れになる危機だ。

巨人にとって有原は「最後の砦」

 こうした現状で、有原は先発ローテーションで計算できる数少ない候補だ。獲得に失敗すれば「宝くじ」と言われ、当たり外れが多い外国人補強に依存するしかなくなる。

「有原は今オフの最後の戦力アップ要因になるかもしれない。(編成面含め)全権を握る原監督は球団に潤沢な予算があると言っている。投手では有原取りに全力を尽くすのではないか」(在京セ・リーグ編成担当者)

 阪神は逆にチーム防御率がリーグトップの2.67で、リーグ随一の「投手王国」だ。今季13勝のエース青柳晃洋投手を筆頭に、西純矢投手ら若手にも台頭の兆しがある。藤浪晋太郎投手がポスティングシステムでMLBに移籍したとしても、びくともしない先発陣の陣容だ。学閥とはいえ、岡田監督に有原は必要不可欠な戦力ではないように映る。

 それでも、有原獲得の意義は小さくないようだ。

「阪神での戦力としての期待より、巨人の戦力にしないことを考えているのだろう。阪神は来季の優勝が期待される中で、懸念要素は排除しておきたい。岡田監督も既にNPB選手のFA市場には参戦しないことを明言し、余剰資金があると語っている。たとえ活躍しなくても有原を囲うことで、巨人の補強を阻害し、必然的に優勝に近づくことになる」(阪神担当記者)

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