プーチンは今日も市民を殺し続けている 戒厳令下のウクライナ・ザポリージャ州最新レポート

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「たまたま部屋を出たあとで…」

 ウクライナの反転攻勢が伝えられる一方で、首都キーウをはじめとする都市部や電力施設に対し、自爆型無人機やミサイルを使った空爆を再開させたロシア軍。さらにプーチン大統領は併合宣言した東部・南部4州に戒厳令を発動、ウクライナ市民たちへの攻撃は日毎に激しさを増している。犠牲になっているのは、言うまでもなくプーチンの指示による侵略さえなければ平和に暮らせていたはずの市民たちだ。

 戒厳令下のザポリージャ州から、写真家・尾崎孝史氏による最新のレポート。

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 連日、空襲警報が鳴り、どこかで爆発音が響く。深夜に攻撃を受ける日もある。10月10日の爆撃で6人が亡くなった集合住宅前には、毛布をかけられた遺体があった。

 プーチン大統領がウクライナ南・東部の4州に戒厳令を発動させたのは、10月20日。翌朝、4州のひとつザポリージャの州都に衝撃音が響いた。爆撃を受けたのは幹線道路に面した5階建ての集合住宅だった。

 2階部分には大きな穴が開き、焼け焦げた壁が落下。「ロシア製のS300ミサイルだ」と、現場で見つかった金属片を前に警察官は説明した。直撃を受けた部屋では、テレビやおもちゃが崩れた壁の下敷きに。爆風は内壁も破壊し、となりの部屋の家具もなぎ倒されていた。アパートの主、港湾労働者のディマ・トレチャク(33)は、

「私と妻、息子で暮らしていました。たまたま部屋を出たあとで全員無事だったのですが……」

 プーチン大統領が9月に4州併合を宣言して以降、ザポリージャ市ではロシア軍による砲撃で70人以上の民間人が命を落とした。繰り返される無差別攻撃に耐えかねて、市民約27万人のうち2万人ほどが州外に避難し、現在も連日、“脱出”が続いている。

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