日本の太陽光発電を食い荒らす中国企業と“怪しい事業者” パネルはウイグルの強制労働で製造されている問題も
日本の経済安全保障を脅かす外資の基幹インフラへの参入は防げるのか。前回に続いて、日本戦略研究フォーラム政策提言委員の平井宏治氏が、太陽光パネルを巡る中国政府による人権侵害や、再生可能エネルギー買取制度を悪用する発電事業者の実態をレポートする。
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中国で開催された中国共産党全国代表大会において、習近平総書記が指導者として異例の3期目に入ったことが明らかにされた。習氏の権力体制は盤石となったが、これに先立ち、米国のバイデン大統領は、10月12日に政権発足後初めてとなる国家安全保障戦略を発表した。そこでは中国を名指しし、〈国際秩序を変える意思と能力を兼ね備えた唯一の競合国〉と指摘して、対抗姿勢を鮮明にしている。
実は、米国では見落とせない動きが相次いでいる。まず、昨年12月に「改正ウイグル人権法」と「ウイグル強制労働防止法」が成立し、今年6月に施行されたことだ。意外かもしれないが、この法律は我が国に大きな影響をもたらすことになる。それは、太陽光パネルの主要部材が新疆ウイグル自治区で生産されているからだ。
中国の大手シリコンメーカーのうち4社が新彊ウイグル自治区に
また昨年4月、米戦略国際問題研究所(CSIS)は、中国政府がウイグル族を強制収容し、収容施設で職業訓練と称して多結晶シリコンの製造を無償や低賃金で強いていることを取り上げた。そこでは、中国の大手シリコンメーカー5社のうち4社が新疆ウイグル自治区に拠点を置いていることや、世界市場の実に95%を占める多結晶シリコンパネル部材の半分近くが、新疆ウイグル自治区における強制労働で生産されている可能性があるとされている。
昨年5月には英シェフィールドハラム大学ヘレナ・ケネディ国際司法センターで人権と現代奴隷制を研究するローラ・マーフィー教授と、ウイグル自治区で19年間生活した経験を持つ、サプライチェーン・アナリストのニロラ・エリマ氏による、新彊ウイグル自治区で中国政府が推し進める強制労働の実態に関する報告書が発表された。米CNNによると、エリマ氏のいとこは新疆ウイグル自治区の収容所に送られており、CNNはかの地に住むエリマ氏の家族について報じたことがある。
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