「エルピス」で感じる長澤まさみの“凄味” エンドロールの参考文献で読み解くストーリー

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戯画化とサスペンス

 冤罪を覆す手立ては二つしかない。一つは容疑者の無罪を証明すること。もう一つは真犯人を見つけることだ。もしも容疑者とは別の真犯人が存在するなら、新たな犯行が続くことになる。

 浅川と岸本は、まず事件当日の松本の動きを検証することからスタートする。

 だが、そもそも松本は本当に無実なのか。物語の発端となる大山の証言は真実なのか。岸本が抱える闇はどんな形で露呈してくるのか。

 テレビというメディアを際どい戯画化によって批評しながら、冤罪をめぐる緊迫感のあるサスペンスドラマとして成立させているのが、この『エルピス』である。

 佐野も、渡辺も、ハイレベルな“確信犯”と言っていい。「次はどうなる?」という視聴者の興味に応えつつ、時には見事に裏切るような展開が期待できそうだ。
(一部敬称略)

碓井広義(うすい・ひろよし)
メディア文化評論家。1955年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。テレビマンユニオン・プロデューサー、上智大学文学部新聞学科教授などを経て現職。新聞等でドラマ批評を連載中。著書に倉本聰との共著『脚本力』(幻冬舎新書)、編著『少しぐらいの嘘は大目に――向田邦子の言葉』(新潮文庫)など。

デイリー新潮編集部

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