ポイント2兆円が無駄金に マイナカード義務化で保険証はどうなる?
拠出された予算は2兆円ほど
便利かどうかよくわからない。だから取得者数が伸びないというのが事の本質。本来なら政府は利便性を追求し、それを周知して利用者を増やすべきだが、その努力をせず、代わりに行ったのは目の前にニンジンをぶら下げることだった。
「それがマイナポイントですが、はっきり言って間違いだったと思います」
と批判するのは、ITジャーナリストの三上洋氏だ。
「マイナンバーカードについてはメリットの薄さだけでなく、そもそも情報セキュリティーに不備があったり、情報が悪用されるのではないかという不安があり、取得者数がなかなか伸びなかった。それを払拭するようきちんと広報することが大事なのに、ポイント付与を始めたことによって、逆に“後ろめたいところがあるからお金を配るんでしょ”という不信感を植え付けてしまったと思います」
これまでマイナポイントのために拠出された予算は計2兆円ほど。これは実に消費税1%分にも相当する巨額に上る。
「きちんと説明すればいいのに金で釣ろうと」
しかしこの「アメ」の政策が想定よりうまく進まず、政府は実質義務化という「ムチ」の政策へと真逆の方向に舵を切ったのだから、いささか乱暴だが、2兆円は無駄金だったと指摘されても文句は言えないだろう。
「義務化となれば、今度は強硬策ですよね」
と三上氏が続ける。
「そうなれば、国がそれを強いるのは、制度におかしな目的があるからだと、また疑念を持たれてしまいかねません」
ちなみに政府がこれまでマイナカード普及の広報に使った予算は320億円ほど。それだけ費やして不安を払拭できなかったのだから、これもまたドブに捨てたと言われても仕方ないのだ。
「私はとっくの昔にマイナンバーカードを作ったよ」
と言うのは、かつて「税金党」の党首を務めた、元参院議員の野末陳平氏。御年90ながら、
「手続き? 面倒だったけど、もちろん自分でやったさ。保険証はまだだけどこれからやるつもり」
と、誠にお若い。
「デジタル化はもう世界の流れだからこれは止められない。でも政府はバカで、下手だよな。きちんと説明すればいいのに金で釣ろうとした。魂胆が見え見えなんだよ。で、それが失敗したら、河野君が目立ちたいばっかりにバーンと結論だけ投げ込んでしまったよな。大チョンボだ」
として言う。
「大事なことなんだから、国民に堂々正論を説け。邪道を行くな。政府にはそう言いたいよ」
場当たり的な意思決定とブレまくる政策。
それこそがデジタルとはかけ離れた思考であることに、岸田、河野両氏は果たして気付いているのか。