“日本一泊まりたい旅館”・加賀屋でお家騒動? 相談役の父が、社長である息子と交代する異例の人事に

国内 社会

  • ブックマーク

「米国流の経営」

 ある地元の観光業者は、

「父親からすれば、長男による米国流の合理的な経営が納得いかなかった部分はあると思う。長男は、JTBなど大手旅行代理店と懇意にしていた関係を見直したり、各現場に責任者を配置して、おもてなしなど現場の判断に委ねられている部分をマニュアル化して結果を出していた。けれど、改革を快く思わない古参の従業員の不満の声とコロナによる収益減で、父親はオレが復帰せねばとなったのでは」

 片や地元の事情に詳しい市政関係者は、

「息子の奥さん、つまりは加賀屋の若女将(おかみ)も『つるや』の女将として再スタートしますが、禎彦さんは彼女ともそりが合わなかったようです。彼女は九州生まれで国内航空会社の元CAと完全に外様でしたが、時代に合わせ現場の声を聞くなど若い世代の社員からは支持があった。一方、昔ながらのトップダウンを重んじる世代からすれば面白くなかったと思う。禎彦さんがホールディングスの役員に中女将である長女、そして次女も加え同族で組織を固めていった点でも、外部の人間を役員にすべしとする息子の意見は通らなかったようです」

 加賀屋に聞くと禎彦氏が書面でこう回答した。

「経営方針や経営手法の対立はありません。與之彦は2024年に開通する新幹線を見据え、芦原(あわら)温泉『つるや』の経営に集中することにし、和倉温泉の本丸は私、禎彦が本腰を入れて経営を行う為にトップに戻ることにしたものです」

 冒頭の「宿100選」で昨年2位に甘んじた老舗をどう立て直してみせるのか。袂を分かった家族の物語は、まだ始まったばかりだ。

週刊新潮 2022年11月3日号掲載

ワイド特集「ある家族の物語」より

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。