日本人がW杯の現実を目撃した「エスコバルの悲劇」 「感動をありがとう」は許されない世界の常識(小林信也)

  • ブックマーク

 Jリーグが誕生した1993年、W杯アメリカ大会の予選も並行して行われた。多くの日本人が切なる願いを込めてサッカー日本代表を応援した、歴史的な現象が日本列島を席巻した。

「感動をありがとう、じゃないんだな、サッカーは」

 久しぶりに会ったナンバー編集長・設楽敦生(故人)がぶっきらぼうに言った。私が25歳でナンバーの仕事を始めた時、担当デスクが設楽だった。初めて短い原稿を書いて提出すると、

「君の文章なんかさ、1行目がつまらなかったら誰も2行目を読んでくれない」
...

つづきを読む