ゼレンスキーの悲願「クリミア半島の奪還」が現実味 ロシア軍が大苦戦する根本原因とは
焦点はヘルソン
これに先立つ3月24日、ウクライナ海軍はマリウポリに近いベルジャンシク港で、ロシアの大型揚陸艦を破壊したと発表した。ロシアにとって海路の安全は保証されていないのだ。
「陸路も危険です。ウクライナ軍は南部で快進撃を続けています。ロシア国内と南部を繋ぐ幹線道路をロシア軍の輸送部隊がトラックで走行すれば、偵察衛星かドローンに補足されるでしょう。南部の最前線からアゾフ海沿いの幹線道路は、高機動ロケット砲システム『HIMARS(ハイマース)』の射程圏内です」(同・軍事ジャーナリスト)
虎の子のトラックにロケット弾が降り注ぎ、あっという間に灰燼(かいじん)に帰してしまう──ロシア軍にとっては最も避けたい事態に違いない。
一方のウクライナだが、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44)はクリミア半島の奪還を公言している。自国の国境線を2014年より前の状態に戻そうというわけだ。
現在、専門家が注視しているのは、南部の要衝ヘルソンだ。ここで近い将来、激戦が行われるという報道は多い。代表的な記事からタイトルだけ紹介しておく。
◆ロシア軍、ヘルソンに増派で守りを強化か ウクライナが見方を変更(BBC NEWS JAPAN:10月25日)
◆ウクライナ軍、南部へルソンで激しい戦闘を予想 ロ軍は前線に新兵投入か(ロイター[日本語・電子版]:10月27日)
ロシア軍は総崩れ!?
ちなみにCNN(日本語・電子版)は10月27日、非常に衝撃的なタイトルの記事を配信した。
◆ロシアがヘルソンに動員兵投入、「砲弾の餌食」として ウクライナ当局
「3社ともロシア軍がヘルソンを死守するため、兵力や武器を集中させていると報じています。たとえ兵力が増強され、戦車や榴弾砲が並べられたとしても、弾薬や医療品、食料が届かなければ戦えません。そして今のロシア軍が、ヘルソンでの激戦を支えるだけの兵站を構築できるとはとても思えませんね」(同・軍事ジャーナリスト)
クリミア大橋を使い鉄道での輸送が可能なら、ロシア軍もウクライナ軍と互角の戦いを繰り広げるかもしれない。
戦史を振り返ると、戦線が下がると補給が容易になったケースは少なくない。代表例が第一次世界大戦の西部戦線だろう。フランス軍もドイツ軍も敗北して戦線が下がると、本国に近くなって兵站は逆に強化された。
だが、クリミア半島にロシアと直結した“大動脈”は失われている。実際にヘルソンで戦闘が始まると、物資不足からロシア軍が総崩れになる可能性は高いという。
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