ラーメンもプチ整形も効果的! 100歳まで健康に生きるために必要なものとは? 専門家が解説

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オペラで寿命が延びる?

 しかし、年齢を重ねるにつれ、いままで当たり前にできていたことが、なかなかパーフェクトにはできなくなります。すると「俺はダメだな」などと気落ちしてしまいがちですが、だんだんできなくなるのは仕方ないこと。失敗のたびにストレスをためるより、「こんなにできてたいしたものだ」と、自分を褒めてあげるほうがよほど有効です。

 言うまでもなく、ストレスは体に悪影響を与えます。人はイライラすると交感神経が優位になって、心拍数が上がり、血圧も上昇します。すると心筋梗塞のリスクが高まりますし、ストレスは、がんのリスク増加にもつながります。

 ストレスの解消には、森林浴が有効だといわれます。林や森の香気成分は副交感神経を刺激し、精神を安定させることがわかっています。芸術にもストレス解消効果が指摘され、どんな世代の人もリラックスさせるのがクラシック音楽で、なかでも効果が高いというのがバロック音楽です。マウスを使った実験では、心臓移植をしたマウスは平均7日間しか生きられないのに、ヴェルディのオペラ「椿姫」を聴かせたら平均で術後40日まで寿命が延びた、という結果があります。

 しかし、個人差があるので、本人の主観を大事にすればいいでしょう。芸術作品よりもポルノに触れたほうがストレスは解消される、という人もいるでしょうから、そういう人はポルノを観ればいいのです。

インプット型よりアウトプット型

 最後に、「80歳の壁」を越えるために頭を使い続けることが大切だと、あらためて強調しておきます。

 オランダのアムステルダム郊外に住む55~85歳の人に、アルファベットの並び替えなどの知能テストを受けてもらい、それから4年間、被験者の様子を追跡した調査結果があります。それによると、テストの成績の上位半分は長生きで、下位半分は短命と、明暗がはっきり分かれたのです。これは生まれつき頭がいい人が長生きだった、ということではありません。頭をよく使っている人ほど長生きできるということです。

 ただし、高齢者の勉強は歴史書を読み込むといったインプット型より、自分で考えて他人と違う意見が言える、といったアウトプット型のほうが有効です。脳機能の観点からも、自分であれこれ考えて発信することは、前頭葉の機能維持に役立ちます。また、他人と違う見方ができる高齢者は魅力的に見え、それが意欲につながります。

 その際、大切なのは実験的発想です。毎日が実験だと思って、旅行でも、釣りでも、囲碁でも、各人がやりたいことに挑戦すればいいのです。そして、自分が試したことは、ガイドブックから得たものよりも生き生きとした知識になり、人に話しやすいはずです。

 タブーを設けたり因習にとらわれたりせず、日々実験的発想でことに挑めば、意欲にもつながり、有意義で幸せな老後を過ごすことができ、結果、「80歳の壁」を越えて、健康な百寿者に近づいていくはずです。

和田秀樹(わだひでき)
精神科医(老年医学)。1960年大阪生まれ。東京大学医学部卒。和田秀樹こころと体のクリニック院長、国際医療福祉大学大学院特任教授。高齢者専門の精神科医として30年以上、高齢者医療の現場に携わっている。50万部のベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、著書多数。

週刊新潮 2022年11月3日号掲載

特別読物「6千人超を診た50万部突破の筆者が指南 100歳まで健康に生きるための『80歳の壁』上級編」より

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