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ドクター新潮 ライフ

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記憶力よりも意欲

 いま「意欲」が大切なことを強調しましたが、私はむしろ記憶力の低下よりも、意欲の低下のほうが害は大きいと考えています。

 というのも、基本的に意欲のほうが、記憶力より先に低下しはじめます。そして意欲が低下すると、他人と関わろうという気持ちも減退するため、脳は衰えていきます。要するに、記憶力を維持するためにも、意欲が大切なのです。繰り返しますが、意欲が低下すると、男性ホルモンの分泌が減り、外出しようという気持ちが失われ、筋力の低下につながります。

 少しくらいもの忘れをしても、いまはスマホなどで簡単に調べられます。記憶力を落とさないように躍起になるよりは、もの忘れをすることを前提に、日常的にメモを取る習慣をつけることのほうが大事だと思います。そして、もの忘れが増えた初期段階で、そういう習慣をつけることができれば、多少の記憶力の低下は怖くありません。

 それに、記憶力低下の原因は脳の老化だけではありません。うつ病に罹患していても、男性ホルモンが減っても、記憶力は低下します。総合的に考えると、記憶力を維持するためにも、意欲の低下を防ぐことがことのほか大切です。

初体験へのチャレンジを

 意欲を維持するためにも大切なのが前頭葉の働きです。前頭葉は創造性や想定外の事態に対応する力を担い、なにより意欲や活力を司っています。だから前頭葉の機能が低下すると、感情のコントロールが上手にできなくなり、「暴走老人」にもなりやすいのです。

 前頭葉の機能を維持するために大切なのは、ルーティンワークを避け、日々違った体験をし、アウトプットをする機会を増やすことです。脳の機能を落とさないために、難しい本を読んだり、数独パズルに挑戦したりしている人がいますが、難しい本で鍛えられるのは側頭葉ですし、数独パズルでは頭頂葉しか鍛えられません。もちろんそれはそれで意味がありますが、前頭葉を鍛えたければ、たとえば、毎日違う店で外食する、いつもと違う道を通って帰宅する、料理をする際に新メニューに挑戦する、といったことが大事です。

 ちなみに、私は週に二つ、年間100回程度は「初体験」へのチャレンジを心がけています。そのとき、ガーデニングでこれまで育てたことがない草花を育てる、といった小さなことも1回にカウントしています。

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