長野久義の巨人復帰に思うこと【柴田勲のセブンアイズ】
広島移籍は「申し訳ないことをした」
巨人が広島の長野久義外野手を無償トレードで獲得した。ご存じの通り、18年オフにFAで加入した丸佳浩外野手(33)の人的補償で広島に移籍していた。現在37歳だ。
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広島が夏ごろから巨人にトレードを打診していたという。この電撃トレードのニュースに接して真っ先に思ったのは巨人の長野に対する“温情”だ。
長野は丸の人的補償のプロテクト枠から外れていた。広島がまさか34歳(当時)のベテランを指名するとは考えなかったのだろう。過去若手を中心に選んできたし、若手選手の育成にも定評がある。
だが、この時は外野手の丸が巨人に移籍したことで同じ外野手として実績を残していた長野に白羽の矢を立てた。また新井貴浩が引退して右打者が欲しかったという事情もあったようだ。
推定2億円を超えるとも見られていた高額年俸の選手だっただけに衝撃は大きく、巨人にすれば全くの想定外で球団幹部が驚いていた。当時の編成担当が長野に謝罪している。球団はずっと「申し訳ないことをした」と思い続けてきたのは間違いない。
長野の人柄
長野は06年に日本ハム、08年にロッテから指名されたが入団を拒否して巨人入りを貫いた。生え抜き選手としてリーグ3連覇にも貢献している。巨人に対する愛情が強い男でもある。
広島に移籍する時には「選手冥利に尽きます。自分のことを必要としていただけることは光栄です」と気持ちよく受け入れた。
広島には好印象だったろう。実際、チームにも早くから溶け込み、マジメな人柄はファンにも受け入れられた。
広島から「いつかユニホームを脱ぐことがあるとしたら、やはり巨人で脱ぐべきではないか」と温かい申し入れがあったのもこの人柄もあったろう。
巨人にしても異存はなかった。無償トレードは交換要員や金銭を求めない。実際、巨人は長野が広島に移籍した時から将来的な復帰を考えていたようで背番号「7」は空いている。
4年間プレーした広島では主に代打の切り札として起用された。今季は9月2日に出場選手登録を抹消され、そのままシーズンが終わった。出番が減り続けていた。今季の出場はプロ最少の58試合だった。
秋山翔吾が6月に広島入りした。今後も外野のポジション争いは厳しくなる。新井新監督が就任して体制が変わったのも無償トレード実現に大きかった。
巨人はいまでも勝負強い打撃と両翼を守れる守備力が十分にあると見ているようだ。若手選手のお手本になる。経験を生かしてほしいと期待をしている。
巨人の恩情はともかく、私は基本的に35歳以上の選手は獲得すべきではないと思っている。
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