「オールブラックスに大金星逃す」は適した表現か? ラグビー日本代表の現在地を分析
横綱であり大横綱か?
10月29日、国立競技場でラグビーのニュージーランド(NZ)代表「オールブラックス」と日本代表とが対戦。国立競技場の最多入場記録を更新し、スコアも日本代表はオールブラックスに7点差に詰め寄って来年のラグビーW杯に向けて弾みをつけた格好だ。この結果を受け、各メディアは金星や大金星という言葉を見出しに使って報じたが、果たしてオールブラックスは横綱であり大横綱なのか?
試合後の報道では、以下のように、金星や大金星という見出しが目立った。
《日本がオールブラックスに惜敗、大金星逃す…6万5000人から大きな拍手》(読売新聞)
《惜しかったジョセフ日本…オールブラックスから4T! 国立最多6万5188大観衆の前で金星あと一歩》(サンスポ)
《日本代表 大金星まであと一歩 オールブラックス追い詰めた!W杯につながる4トライ》(デイリースポーツ)
オールブラックスは過去125年にわたって、7割5分程度の勝率を誇り、それは他のどんなスポーツの代表やチームよりも優れたもので、それにより「史上最も成功したスポーツチーム」などと呼ばれている。日本がもし勝てれば「大金星」「金星」だった、という見方を見出しは示している。
今年の戦績は?
しかし、その王国にも近年、綻びが見え始め、これまで負けたことのない相手に失態を演じるようになっていた。
例えば2016年11月、シカゴでアイルランドに史上初の敗北。2019年のW杯日本大会では3連覇を逃し、2020年11月にはシドニーで同様にこれまで負けたことのないアルゼンチンに敗れた。
そして2021年にはヨーロッパでフランス、アイルランドに連敗。今年に入ってホームでアイルランドに連敗した後に南アにも敗れ、テストマッチ3連敗を喫した。世界ランキングは史上最悪の5位に沈み、その後もホームでアルゼンチンに敗れている。今年に入っての戦績は日本戦まで5勝4敗で、王国の黄昏を感じさせる状況だった。ちなみに現在の世界ランク1位はアイルランドで、日本は10位だ。
「ここ数年のスパンで見ると、オールブラックスは大横綱でも横綱でもないことは明らかです。自身もオールブラックスでプレーした経験のある日本代表のヘッドコーチ、ジェイミー・ジョセフが、“かつては誰もが我々を少し恐れていたが今はそうではない”と話していた通りでしょう」
と、担当記者。オールブラックスには今年あと3試合が残されており、全勝すれば7割ほどの勝率には達するのだが、群雄割拠の様相を呈していることは間違いないようだ。
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