オリックス日本一! 育成出身「宇田川優希」登場でヤクルトを圧倒した「新時代の継投術」
助っ人「守護神」の大活躍
来日1年目のジェイコブ・ワゲスパックも、当初は先発要員だった。ただ、中盤に入ると、こちらも山崎颯と同様にスタミナ面での不安が目立ち、10度の先発機会で、最長イニングは「6回」。成績も2勝3敗と黒星が先行していた。
それでも、身長1メートル98の長身から、最速159キロの剛球を投げ込める。1イニング・15球前後でのショートイニングなら、この助っ人はもっと生かせるのではないか。中嶋監督は、7月下旬からワゲスパックをリリーフに転向させた。
これも、ピタリとはまった。リリーフでの22試合で、3敗こそ喫しているが、5セーブ&7ホールド。日本シリーズは不調だった平野佳寿、阿部翔太に代わって守護神を務め、シリーズ4連勝の試合では1勝3セーブの大活躍で、胴上げ投手にも輝いた。
つまり、宇田川、山崎颯、ワゲスパックの『剛腕トリオ』は、昨年の日本シリーズはもちろん、今季の交流戦でのヤクルト戦でも、まだ影も形もなかったパターンだった。
戦い方の「進化」
これらの新戦力の台頭で、オリックスの戦い方が“進化”していることが、日本シリーズでの戦いぶりを精査すると、明らかに読み取れる。
第2戦は、2点のリードの5回から逃げ切りに入った。山崎颯は5回からの2イニングをピシャリ。6回には村上宗隆から156キロで見逃し三振を奪った。宇田川は7回、代打の青木宣親を150キロで空振り三振。ワゲスパックは8回、2死満塁のピンチを招きながらも長岡秀樹を152キロで空振り三振に仕留め、無失点でつないだ。
3点リードの9回、2年目の新ストッパー・阿部が同点弾を許したが、その阿部もレギュラーシーズンでは、44試合登板で失点3、防御率0.61という驚異的な数字を挙げており、新人王候補にも名前が挙がっているほどの活躍を見せていた。
先発投手の評価の指標として使われる「クオリティー・スタート」(QS)は「6回3失点以下」が基準。つまり、先発投手の最低限の仕事は「6回」を投げ切ることで、残りの「3回」をいかにして逃げ切るかが、ブルペン陣の仕事ともいえる。
ただ、先発投手も150キロ台のスピードが“普通”になってきた分、肉体への負担も消耗度も早くなっている。かつて、阪神監督としてジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之の「JFK」と称された鉄壁のリリーフ陣を整備した岡田彰布氏が、来季から再び阪神監督を務めるが、その就任会見で、新時代のリリーフは「3人では足りん」と語ったほどだ。
投手のタイプや、その実力や調子によっては、リリーフをつぎ込むタイミングが「7回からの3イニング」という従来の常識から“前倒し”が必要になってくる時代が、いよいよ始まろうとしているのだ。
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