日本一有名なパロディ時計「フランク三浦」 本家に“勝訴”から山あり谷ありの5年間
世界が注目した(?)商標を巡る裁判での勝訴確定から5年。あの頃、一世を風靡した「フランク三浦」の名を最近あまり聞かなくなった。時計業界は高級時計の売れ行きが好調だと話題になる中、高級時計パロディのフランク三浦に何か“おこぼれ”的な影響はあったのか? 昨今の円安の影響は? 同ブランドを展開する、大阪市のディンクス・下部良貴社長に聞いたところ、低い山と深い谷があった5年間と、ある企みが明らかに。【華川富士也/ライター】
【写真】見れば誰もがほしくなる? ひとクセもふたクセもある商品ラインナップを一挙紹介
裁判後に注文が殺到!
まずはこれまでのおさらい。「フランク三浦」は2011年に時計輸入・企画会社ディンクスが販売を開始し、12年に商標登録した。スイスの高級時計フランク・ミューラーが一瞬よぎるネーミングに、手書きのカタカナと漢字のブランドロゴや、「完全非防水」をうたう脱力感が受けヒット。しかし15年にフランク・ミューラー側から申し立てがあり、特許庁が商標登録を無効に。フランク三浦側は特許庁の審決の取り消しを求める訴訟を起こし、知的財産高裁は16年、取り消しを認めた。フランク・ミューラー側が上告するも、17年に最高裁が棄却。フランク三浦の勝訴が確定し、晴れて商標を使い続けられることになった。
世界的時計ブランドとの商標争いに勝利したことで、フランク三浦の知名度は急上昇した。下部社長によれば、「知財高裁で勝訴した後から注文が殺到し、大手通販サイトから10万本、以前からお付き合いがあった業者さんから知らない会社さんまで、あらゆるところから注文が来ました。たぶん、全部受けていたら50万本は売れていたと思います」。
問い合わせ対応が忙しすぎて売上げダウン
“勝訴バブル”をつかむ大チャンス! しかし、手元にあった在庫は数千本だけだった。当然、大量生産に走るのかと思いきや、
「中国の工場で作ってるんですが、当時でも発注から60~90日はかかりました。どうせこういう話題なんて、持っても1週間とかそこらじゃないですか。大量に作ったところで、届いた時に買いたい人がどれぐらいいるのか。それに弁護士さんに『イケイケになったらあかんよ』と釘を刺されまして……」
実は大儲けのチャンスをみすみす逃していたという。それどころか、
「問い合わせの電話が多すぎて通常業務に支障が出ました。うちの会社、フランク三浦の売上げって2割ぐらいなんです。他の8割の仕事に手が回らなくて、全体としては売上げを落としました」
[1/3ページ]