西島秀俊、来年1月期のテレ朝「刑事ドラマ」で主演へ はぐれ刑事純情派以来30年ぶり
西島秀俊(51)がテレビ朝日の来年1月期の連続ドラマに主演することが明らかになった。西島がテレ朝の連ドラに主演するのは初めて。作品は「木曜ドラマ 警視庁インサイダー(仮題)」(午後9時)で、刑事に扮する。テレ朝の連ドラで西島が刑事を演じるのは「はぐれ刑事純情派V」(1992年)以来、実に30年ぶりとなる。
西島秀俊は新人俳優だった1992年、テレ朝の連続ドラマ「はぐれ刑事純情派V」に半年間に渡って出演した。その後、フジテレビの連ドラ「ストロベリーナイト」(2012年)などで刑事に扮したが、テレ朝での連ドラの刑事役は「はぐれ刑事――」以来で30年ぶりとなる。
「はぐれ刑事――」の主演は故・藤田まことさんが演じたベテラン刑事の安浦。西島の役柄は安浦に付く新人刑事の中上だったが、今度は西島が主演だ。
西島は事あるごとに藤田さんの名前を口にする。俳優という仕事を基本から教えてもらったという。西島にとって藤田さんは師の1人。藤田さんから「新人であろうが、意見があったらハッキリ言いなさい」などの助言を受けた。
さらに西島が映画の公開イベントなどで、よく口にする藤田さんの思い出は「はぐれ刑事――」で自分の登場分の撮影が終わった際に贈られた色紙の話。そこには藤田さんの直筆で「本業をゆっくりと」と書かれていた。やがて西島は藤田さんの言葉通りの俳優人生を歩む。
仕事激減も守られた教え
西島は「はぐれ刑事――」を離れると、翌1993年にはフジのトレンディドラマ「悪魔のKISS」と同「あすなろ白書」に出演。たちまちスターとなる。
傍から見たら順風満帆だった。だが、1997年には所属していた大手芸能プロの渡辺プロダクションを離れ、小さな芸能プロへ移籍する。映画に出られなかったからだ。
当時のトレンディドラマに出演する若手俳優は演技力よりルックスが重視されるきらいがあった。リハーサル時間も映画や演劇と比べると圧倒的に少なかった。西島は演技という「本業」をゆっくりとやりたかったのだろう。
大手芸能プロを離れた後の西島は仕事が激減。1998年から2001年までは1本も民放の連ドラに出られなかった。まるでパージだった。
もっとも、結果的に藤田さんの教えは守られた。後に日本を代表する監督となる東京芸大大学院教授(映画専攻)の黒沢清監督(67)による「ニンゲン合格」(1999年)などじっくり撮る映画に主演。着実に力を付けていった。
また今年3月末、米国のアカデミー賞・国際長編映画賞を受賞した西島の主演作「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督は東京芸大大学院での黒沢監督の教え子。雌伏の期間で西島は演技力を高め、人脈を広げた。
西島が主人公・新島八重(綾瀬はるか[37])の兄・山本覚馬に扮したNHK大河ドラマ「八重の桜」(2013年)の制作統括・内藤愼介氏は「西島さんの演技にはウソがない」と評した。
確かにそう。昨年10月から今年3月までの日本テレビ「真犯人フラグ」で演じた主人公・相良凌介は超が付くほどお人好しで、現実には存在しそうにない人物だったが、西島が演じると、身近に思えた。そのうえ西島は演技であるように見せなかった。
TBSの7月期ドラマ「ユニコーンに乗って」で扮した小鳥智志も同じ。2まわり年下の起業家・成川佐奈(永野芽郁[23])に滅私奉公する誠実な元銀行員で、やはり現実味が乏しい人物だったものの、西島が演じると、実在しても不思議ではないように思えた。演技にも無理を感じさせなかった。
西島がテレ朝の連ドラで来年1月期から演じる刑事は、はみだし者になる予定。アウトサイダーだ。相良、小鳥とはかなり違ったキャラになりそうだが、ウソのない演技が出来る西島なので、また役にピタリとハマるだろう。
西島は「ドライブ・マイ・カー」が世界的に評価される前から、連ドラでモテモテ。昨年5月から同8月はテレビ東京「シェフは名探偵」に主演した。同5月から同10月はNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」に出て、主人公・百音(清原果耶[20])に強い影響を与える気象予報士・朝岡を演じた。
映画界も放っておかない。今年だけでも「シン・ウルトラマン」と主演作「グッバイ・クルエル・ワールド」の2本に出演。配信ドラマ「仮面ライダーBLACK SUN」にも中村倫也(35)とダブル主演した。
一方で1990年代のトレンディドラマのスターが失速した例は枚挙に暇がない。「本業」以外の歌やバラエティに進出した人もいた。藤田さんの教えとそれを聞き流さなかった西島は正しかったのだろう。
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