国防の要・岩国基地の周辺に上海電力がステルス参入のナゾ 複雑怪奇な転売スキームでメガソーラーを買収

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大阪府市の不可解な対応

 一方、昨年1月29日付の産経新聞は〈政府が主導し、大阪府が名乗りを上げる「国際金融都市構想」で、大阪府市と経済界の溝が埋まらない〉とする記事を掲載した。

 記事によれば20年12月に、大阪府・大阪市と地元経済団体による国際金融都市構想の会合が行われた。同構想は北尾氏によって提案されたといわれているが、その会合では吉村洋文知事が「アジアのデリバティブ拠点や、規制緩和により金融とITを組み合わせたフィンテックの活用を目指す」と提言したものの、経済界は「具体的な課題や工程表の議論が重要だ」と冷ややかで、構想はまとまらなかったとされる。

 さらに記事では〈関西財界では「SBIは利害関係が強すぎる」という意見が中心的。私設取引所の開設や、出資する海外フィンテック企業の誘致に動く北尾氏がトップに就けば、特定企業の活動を支援しているとみられかねないと懸念する〉という地元の声も紹介している。

 翌年1月18日、大阪市役所で大阪維新の会の幹部である吉村知事と松井一郎市長、北尾氏、SBI顧問の中塚一宏前金融担当相らによって、国際金融都市構想を巡る非公開会合が開かれていた。これを報じた産経新聞の同記事によると、北尾氏は22年に証券取引所を介さず売買できる私設取引所「大阪デジタル取引所」を開設し、海外取引所と連携させる構想を披露したという。そして中塚氏は、大阪堂島商品取引所が21年4月の株式会社化に向けて、海外商品先物業者やヘッジファンドと協議していることなどを説明したと報じている。

関西財界が一転、賛成へ

 報道から1年あまり。結末は大阪府市が北尾氏の意向を受け入れる形となった。今年の6月27日にはSBIの子会社が70%、三井住友FGが20%、野村ホールディングスと大和証券グループ本社が5%ずつ出資する「大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)」が私設取引所を開業。株式や上場投資信託の取引を開始した。

 ODXはこれらの取引において、5年後に国内の3~4%のシェアを獲得することを目指している。無論、大阪府市や関西財界が掲げる「国際金融都市」構想との連携も視野に入れている。

 また、来年度中にはブロックチェーンなどの電子技術を用いて発行される「デジタル証券」の取引所開設も目指すと鼻息が荒い。だが、2年前は消極的な意見に終始していた関西財界が一転、賛成に転じた理由はいまも明らかにされていない。ともあれ、吉村知事や松井市長が北尾氏に強い信頼を寄せていなければ、こうした結論には至らなかったはずだ。

 改めて関連記事を見ていくと、ODXの私設取引所は将来的にデジタル人民元の扱いを視野に入れているように思える。それを大阪府市は内諾しているのではないのか。とすれば、この取り組みは中国の国益に沿ったものではないのか――。

 次回は我が国の経済安全保障を脅かす、外資による企業買収をいかに防ぐかという点について具体的な防衛策を提言したい。また、太陽光発電で使用されるパネル部材の大半が、中国による人権を無視したウイグル人の強制労働と石炭発電で作られている実態に言及しつつ、太陽光発電事業が実は環境に優しくない理由、さらに財務的に脆弱な怪しい業者が投機的経営で食い荒らしている実態にも切り込もう。

平井宏治(ひらいこうじ)
日本戦略研究フォーラム政策提言委員。1958年神奈川県生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。外資系投資銀行、M&A仲介会社などを経て、 2016年から経済安全保障に関するコンサル業務を行う株式会社アシスト代表取締役社長。20年より日本戦略研究フォーラム政策提言委員。著書に『経済安全保障リスク』『トヨタが中国に接収される日』『経済安全保障のジレンマ』がある。

週刊新潮 2022年10月27日号掲載

特集「中国の侵略を許す『太陽光発電』“中共の尖兵”はいかにして日本の基幹インフラに潜り込んだか 国防の要『岩国基地』に『上海電力』ステルス参入の魔の手」より

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