国防の要・岩国基地の周辺に上海電力がステルス参入のナゾ 複雑怪奇な転売スキームでメガソーラーを買収

国際 中国

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極東地域で最大級の軍事拠点

 共産党による独裁国家の中国は、力による現状変更を繰り返し、国際秩序への挑戦を続けている。そんな覇権主義国家から、我が国を守る抑止力の一つが山口県岩国市にある海上自衛隊岩国航空基地だ。ここには米海兵隊の航空基地もあり、2010年には基地の滑走路が沖合に移設され、18年には神奈川県の厚木基地から、米海軍に所属するFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機などおよそ60機の空母艦載機が移転。いまや約120の戦闘機が所属する、米軍としては極東地域で最大級の軍事拠点である。

 艦載機部隊が所属する、米第5空母航空団の司令部機能も同様に厚木から移転した。いまや対中抑止力を考える上での“最前線”だが、この岩国基地からほど近い場所に、上海電力日本の傘下に置かれた合同会社東日本ソーラー13(以下、東日本ソーラー)が運営するメガソーラー(岩国メガソーラー)がある。出力は7万5千キロワットが計画されており、すべて中国電力に売却される。

国防動員法

 ところで、中国では10年に「国防動員法」が成立している。中国政府が有事と判断すると発動され、満18歳から満60歳の中国国籍を持つ男性と、満18歳から満55歳の中国国籍を持つ女性に人民解放軍への協力が求められる。中国国内在住者に限らず、海外在住者、すなわち日本で起居する約74万人の在日中国人も動員の対象だ。

 国防動員法が発動された場合、岩国基地にはどんな影響が予想されるのか。なぜ、中国政府と密接な関係を持つ上海電力は日本の対中防衛の重要拠点近くのメガソーラーを取得したのか。

 一抹の不安を胸に、上海電力日本が岩国メガソーラーを買収した経緯を謄本などで確認した。すると、岩国メガソーラーが設置されている土地謄本には、SBI証券と合同会社が関係していることが分かった。

 その参入方法は前述の通り、“ステルス”というべき狡猾さだ。詳しい経緯を理解するには、そのカギとなる「合同会社」について知っておく必要がある。以下、簡単に解説する。

 会社法が定める「会社」は株式会社と持分会社とに分類される。持分会社には合名会社、合資会社、そして合同会社の三つがある。合同会社の株式会社との違いは大きく二つ挙げられる。

(1)決算公告の義務がなく、第三者に経営実態を公開する必要がない。

(2)利益配分の割合や議決権の比率を、出資比率によらず定款で自由に設定できる。

 この2点により、合同会社はサラリーマンが副業のために一人で立ち上げたり、複数の企業が合弁事業を行う際に設立されることが多い。合同会社への「加入」は、株式会社で例えるなら対象会社の発行済株式を取得して株主になること。逆に合同会社からの「退社」は、対象会社の発行済株式を売却して株主でなくなることだと考えれば分かりやすい。

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