不倫、再婚、離婚の末に最初の妻と再々婚した44歳男性の苦悩 突然知った空白の4年間の秘密

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雪絵さんの不貞に「ホッとした」

 4年も経つと、雄浩さんは充実感のない結婚生活に嫌気がさしていた。出張と言って出かけた日、急遽、出張がなくなって帰宅したら、雪絵さんが男を自宅に引っ張り込んでいたという。

「ああ、やっぱりとホッとしましたね。これで別れられる、と。男を訴えて慰謝料とってもいいんだよと言って、雪絵を追い出しました。わかっていたんです、僕が求めているのはすみれだということを。でも今さら帰ってきてほしいとは言えなかった」

 雪絵さんと離婚してからほどなく、すみれさんから突然連絡があった。雄浩さんの母が余命いくばくもないという。息子には知らせるなと言われていたが、知らせないわけにはいかないとすみれさんは言った。病院に駆けつけると、痩せこけた母が横たわっていた。

「すみれちゃんったら、と母が笑ったんです。すみれは黙って部屋を出て行きました。母の枕元で、オレはとんでもない親不孝だったと気づいた。すみれや子どもだけでなく、母まで傷つけて。『私の年金が少ないし、何年にもわたって病気をしたから、すみれちゃんは必死に働いてくれた。あんたに連絡しようと言っても、それだけは嫌だと。養育費を払ってくれているのだから、雄浩さんの新婚生活を邪魔するわけにはいかないって』と聞いて、号泣しました」

 母はひとり息子に会って安堵したのか、それから数日後に眠るように亡くなった。すみれさんと一緒に住むようになってから母は体調を崩し、それからずっと病と闘って入退院を繰り返していたのだという。

「『すみれちゃんは本当によくめんどうを見てくれた。私が退院して家にいるときは夜、働きに出ていた。夜のほうが時給がいいからって』なんて話も母からは聞きました。通夜と葬儀が終わったあと、娘たちが『おとうさん、お仕事終わったの?』と言うんです。仕事で海外にいて連絡がとれないということにしていたようです。4年近く離れていたのに娘たちは僕にまとわりつくように懐いてくれて。すみれはかつてより痩せていたけど、なんだか色っぽかった」

 一段落してから、雪絵さんとは離婚していること、娘たちのことを考えてやり直せないだろうかと雄浩さんは懇願した。頭を床にこすりつけて「すべてオレが悪い。おふくろのめんどうまで見てもらって申し訳ない」と泣いた。

「私は母親を早くに亡くしているから、あなたのお母さんが私の味方をしてくれたとき本当にうれしかった。一生、恩に着てめんどうをみようと決めたの。私とお母さんのことと、私とあなたのことは別に考えてちょうだい」

 すみれさんはきっぱりとそう言った。そういう潔さがすみれさんのいいところだったと雄浩さんは思い出した。自分の生き方は、すみれさんの足下にも及ばないとはっきり悟った。

 その上で、もう一度だけチャンスをくださいと頼んだ。

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