「チェキ撮影の現場はさながら戦場」 慶應卒のバイト芸人・ピストジャムが明かす、撮影スタッフ「チェキスタ」の裏側

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兵士のように戦いに備えるチェキスタ

 チェキスタの仕事は、まず準備から始まる。箱買いされた大量のチェキフィルムを次々に開封していき、取り出したフィルムを今度はまた別の箱に順につめていく。すばやい手つきで黙々とその作業に没頭する先輩スタッフは、まるで兵士が戦いに備えて銃弾や弾薬を仕込んでいるようだった。

 メンズグループの客は女性ばかりだった。客たちは、ライブが学生服公演なら自分たちもセーラー服やブレザーといった制服姿でライブに来たりして楽しんでいるようだった。メンズグループのチェキ撮影は、女性グループとは違い、客との距離が近かった。コロナ禍を経験したいまとなっては想像もできないような、恋人のような距離感でチェキを撮ることができる特典会は大盛況だった。ライブ後にチェキ券を求めて列をなす客たちの姿は熱気に包まれていた。そして撮影が始まると、そこはまさに戦場と化すのだった。

 このチェキの売り上げがアイドルの子たちの給料に反映されるとも聞いていたので、この仕事のポイントは、とにかく速く、たくさんの枚数を撮ることが重要なんだと理解した。準備した替えのフィルムをズボンの前ポケットに二つ、後ろポケットに三つねじ込み、右手にカメラを持ち、首からもう1台カメラをぶらさげて、ひたすらチェキを撮りまくった。

次々にポーズを決めるアイドルたち

 カメラを2台持つのは、効率を追求すると必然だった。インスタントカメラなので、シャッターボタンを押してからチェキが出てくるまでどうしても数秒の時間がかかる。その数秒をむだにしないために、1枚撮影したら、2枚目は首からぶらさげたカメラで撮影し、3枚目はまた手に持った最初のカメラで撮影し、と繰り返すのが一番効率的だった。そして、フィルムの交換のスピードも大切だった。フィルムのパックは一つ10枚入りなので、2時間弱の撮影中に何度も交換することになる。これにもたつくと、撮影のテンポも悪くなるので、それこそ兵士が戦場ですばやく弾薬を補充するように、ガシャッ! ガシャッ! ガシャッ! というリズムで交換した。

 こんなに速いスピードで撮影が進むと、アイドルの子も客もたいへんだろうなと思ったが、どちらも慣れたもんだった。シャッターを切るたびに、テンポよく笑顔やキメ顔、甘えた顔やふざけた顔、そしてポーズもくっ付いたり、離れたり、二人で手を出し合ってハートをつくったりと、息ぴったりにいろんな表情やポーズをキメてくれるので、撮られ慣れてるなあと感心した。

 そんな感じで撮影を続けていると、いつの間にか僕もどんどんとテンションがあがってきて、グラビアアイドルの写真を撮影するカメラマンのように、写真を撮りながら「いいよ! いいよ~!」「はい! こっち向いて~!」「次こっちで撮りま~す! いきま~す!」と気付けば大声を出していた。そして、あっちからもこっちからも「次こっちお願いします!」と撮影の依頼も飛び交うので、売れっ子カメラマンになった感じで「OK! 次そっちね~!」などと返事をすることになる。顔は右向いて、手は正面でチェキを撮って、足は交差させて左に行こうとしているという、なんとも奇妙な体勢になっていることもたびたびだった。

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