「チェキ撮影の現場はさながら戦場」 慶應卒のバイト芸人・ピストジャムが明かす、撮影スタッフ「チェキスタ」の裏側

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後輩の助っ人でアイドルライブのMC

 慶應大学卒、吉本所属、芸歴20年――これまで一度もブレークすることなく、50以上のバイトを経験してきた“バイト芸人”・ピストジャム。そんな彼が、珍バイト遍歴やバイト芸人の生き抜き方を赤裸々につづった『こんなにバイトして芸人つづけなあかんか』(新潮社)を10月27日に上梓した。今回、彼が明かすのは、アイドルのライブでチェキを撮影する仕事、通称「チェキスタ」の裏側だ。

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 FreeKという芸能事務所から、アイドルライブのMCの仕事をいただいている。6年前、後輩芸人の助っ人として僕が代わりに行ったことがきっかけだった。

 そのとき、僕に連絡をしてきたのは、ギチというコンビの青柳だった。青柳とは8年芸歴が離れているのだが、年齢が三つしか変わらず、僕と同じ下北沢でバイトをしていたこともあって、自然と仲よくなった。ふだんから食事や飲みも連れだって行くし、月に1回、下北沢で一緒にお笑いライブを開催していたこともあった。

 青柳はロックが好きで、タイトなTシャツにジーンズというファッションが多かった。ロックスターに憧れているのか、たばこもわざとかっこをつけた感じで、渋い仕草で気だるそうな顔をして吸っていた。しかし、はたから見ると、むちむちのTシャツを着たちっちゃなおじさんが疲れた表情でたばこを吸っているだけだった。僕は、そんな全然キマっていない彼が愛らしくて好きだった。

ライブ前日に無茶ぶり

 連絡が来たのは、アイドルライブの前日。コンビで司会する予定だったのだが、相方がインフルエンザになってしまい、急遽ひとりだけで出演することになって困っているとのことだった。青柳ならひとりでも進行できるはずだと励ましたが、「せっかくなんで、一緒にMCしてもらえませんか?」と言ってきた。「せっかくなんで」の使いかた間違ってるやろと思ったが、かわいい後輩の頼みは断れないなと思い、仕事を受けることにした。

 場所は、秋葉原のTwinBoxというライブハウスだった。衣装はどうするのか聞いたら、襟付きシャツに蝶ネクタイで出るというので、それに合わせることにした。そこでの仕事の流れは、アイドルのライブのあと、会場の客による出演者の人気投票があり、僕たちがステージ上でアイドルとちょっとしたゲームをしてから、その順位を発表していくというものだった。

 バンドのライブはよく見に行っていたが、アイドルグループのライブは見たことがなかった。僕はテレビに出ているAKBとかももクロくらいしかアイドルを知らないので、当然、その日に出演するどのグループも、名前を聞いてもわからなかった。それでも、アイドルのライブってどんな感じなんだろうと純粋に興味があったし、このあと、お笑い芸人として自分もステージにあがるので、事前に客の様子を知りたいのもあり、フロアの後ろのほうからライブを見学させてもらうことにした。

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