「70歳を過ぎたら大学病院に行ってはいけない」その驚きの理由は? お年寄りにとって本当に必要な医師とは?

ドクター新潮 ライフ

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正常値を追い求めることがリスクに

 その後、イギリスのカーディフ大学で行われた研究で、ヘモグロビンA1cが7.7%のとき死亡率が最も低く、それが11.0%になると死亡率は79%高まり、逆に6.4%まで下がっても、死亡率は52%増になることがわかりました。糖尿病の場合、無理に正常値に収めようとすると、低血糖を引き起こし、心不全などの合併症につながりうることが知られています。だから、「強化療法」で死亡率が上昇するのだと思いますが、いずれにせよ、盲目的に正常値を追い求めることには、こうしたリスクがつきまとうのです。

 1974~89年にフィンランド保健局が、コレステロール値などが高い40~45歳の男性1200人を対象に行った調査研究も、紹介しておきましょう。4カ月ごとの健康診断にもとづいて数値が高い人には薬を処方し、塩分制限などの健康管理を行う「介入群」600人と、健康管理に介入しない「放置群」600人に分けて追跡調査を行ったところ、がんによる死亡率ばかりか心血管系の病気の罹患率や死亡率、それに自殺者数にいたるまで、「介入群」のほうが「放置群」より高かったのです。

反証を示すべき

 病気になった人に適切な治療を行えば、死亡率は低くなると思います。しかし、数値を改善したからといって、必ずしも死亡率が下がるわけではないのです。こうしたデータを示すと、数値にこだわる大学病院の医師たちの一部は、「でたらめだ」と反発しますが、批判をするなら、自分たちも長期にわたる追跡調査を行い、反証を示すべきです。

 大切なのは、なにが患者さんにとって有意義であるかを考え、それを治療に生かす努力をすることではないでしょうか。

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