「70歳を過ぎたら大学病院に行ってはいけない」その驚きの理由は? お年寄りにとって本当に必要な医師とは?

ドクター新潮 ライフ

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コレステロールを減らすと免疫機能が下がることも

 さらに治療の際も、「臓器に良いもの」を「体に良いもの」より優先してしまいがちです。たとえば、コレステロールが動脈硬化や心筋梗塞のリスクになるのは事実です。ところが、コレステロール値を下げようとすると、免疫機能が下がります。男性ホルモンの減少や、うつ病のリスクの上昇にもつながってしまいます。つまり、循環器のことだけを考えれば、コレステロールは減らしたほうがいいということになっても、メンタルを含めた体全体のためには、必ずしも減らす必要がありません。

 臓器別診療では、このように体全体を見渡し、治療の影響を見極める目が、曇ってしまうのです。

求められるのは総合診療医

 それでは高齢者の治療に必要なのは、どのような医師なのでしょうか。それはゼネラリストとしての総合診療医です。「臓器は診れども人は診ず」という、臓器別に専門分化した治療よりも、消化器も呼吸器も循環器も診ることができて、さらには「人」を診て、患者さんの心のケアまでできる医師による治療が、いま求められています。

 現在、全国で20ほどの大学病院に、総合診療科が置かれています。しかし、その陣容は多くの場合、教授と准教授、それに助手と、せいぜい5人ぐらいを集めた程度です。日本では専門分化された医師が圧倒的に多いですが、たとえばイギリスは、医師全体の約半数を総合診療医が占めるといいます。とりわけ高齢化が著しい日本では、専門分化医3に対し、総合診療医7くらいの比率でちょうどいいでしょう。

 実は2004年、小泉純一郎政権のとき、「スーパーローテート」という制度ができています。これは研修医に、複数の診療科での臨床研修を義務付けるという、基本的にはとても良い制度です。とはいえ、複数の専門科で研修を重ねれば、総合診療ができる医師になるかというと、そんなに簡単な話ではありません。

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