ピザハット&ナポリの窯のバイトをかけもちした結果“珍事件”が バイト芸人・ピストジャムが「同業バイトかけもち」を勧める理由とは
ピザ屋バイト二股男
それからピザハットとナポリの窯のかけもちが始まった。予想どおり、仕事内容はまったく同じだったので、初日からなんの問題もなく働けた。ナポリの窯のバイトの人たちも、新人のはずの僕の配達の速さに驚いているようだった。
このピザ屋のかけもちは、予測していなかったことをたくさん引き起こした。
ナポリの窯でピザを配達している途中に、もともと働いているピザハットのバイト仲間とすれ違ったり、信号待ちで一緒になったりした。ピザハットの一部の仲間には、ナポリの窯でもバイトを始めたことを伝えていたが、もちろん知らない人もいた。その知らない人が、バイクがすれ違う瞬間に、ふだんピザハットの制服を着て働いている僕が、ナポリの窯の制服を着て配達する姿を見たら、そりゃ二度見するだろう。僕は、ピザハットの人たちもずいぶん驚かせてしまったようだ。現に、僕とすれ違ったピザハットの人は、店に戻って「あいつバイト休んで、バイトしてたよ」と騒いでいたらしい。
かけもちを始めて半年ほど経ったころ、ナポリの窯の店長に「最近ピザハットばっかりで、全然こっち入ってくれないじゃないですかあ。もっとこっちのシフトも入ってくださいよお」と、浮気相手の女の子が言いそうなセリフを言われて笑ってしまった。確かに、かけもちとはそういうことなのかもしれない。しかも、同業種だからなおさらだ。いつの間にか僕はナポリの窯では、ピザハットが本命の彼女で、ナポリの窯は浮気相手という設定の二股男になっていた。
ついに3軒目のピザーラへ
ピザハットはピザハットで、また違ったニュアンスのリアクションで笑ってしまった。僕がかけもちしていることは、いつしかピザハットの店長の耳にも入っていた。あるとき店長から、「別に正社員じゃないからいいんですけどお……。どっちがメインのバイトなのかなあと思って」と言われた。まるで「ちゃんと付き合ってるわけじゃないから強く言えないけどお……。私とあの子、どっちが本命なの?」みたいな感じだ。いい感じの女の子にちょっと嫉妬されているような。
不思議と、取り合いされていると思うと嫌ではなかった。まんざらでもないって、こういう感じか。
あと、ピザハットの仲間からナポリの窯を紹介してほしいと頼まれたりもした。その人は、ピザハットをやめてナポリの窯に移りたいということだったので、話は早かった。そして、またその人がさらにピザハットのバイトをナポリの窯に引き入れたので、僕がかけもちした影響で、ナポリの窯には元ピザハットのバイトがどんどん増えていった。店長もずいぶん喜んでくれて、僕も面目躍如というところだ。
ただ、それによってナポリの窯のバイトの人数が増えてしまい、シフトが入りづらくなった。そのため、僕は近所のピザーラにも手を出し、ついにピザ屋を3軒かけもちすることになった。モテる男はつらいよ。