「夫のことが心底嫌になった」 家事の細部まで指示されて離婚を口にする38歳妻

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ウエディングドレスも選べなかった

 ここから話は本題に進んでいきました。

 小さな指示もあれば大きな指示もあったといいます。

 28歳で結婚した時、結婚式を行うチャペルのあるホテルを選びなさいと指示したのも夫で、新婦が着るウエディングドレスも、真っ白ではなく少し黄みがかかったパフスリーブのかわいいデザインを選んだのも夫だった。

「今になって考えると、おかしいんですよね。ウエディングドレスって、新婦が着たいものを選びますよね。でも、私は、夫から『これを選びなさい』と指示されたものを、あたかも私が選び取ったように手にしたんです。試着もそのドレスだけで、他のドレスには袖を通してもいません」

 彼女はウエディングドレスを試着したかったのかしら。

「もちろんです。たくさんのドレスを試着して、どれがいいかたくさん迷って、その中から私の好きなデザインを選びたかったんです。本当は、ふんわりしたかわいいドレスではなく、少しクールな真っ白のマーメードラインのドレスを着てみたかったんです。でも、試着も、迷うことも許されなかった気がして、夫の指示に従いました」

 彼女に対して彼が行ったのが、「指示」であるか「命令」であるか「提案」なのか、まだ判断できませんが、なにより彼女が「指示された」と感じていること自体が大切なことです。

「結婚して10年が過ぎましたが、いつも同じです。いつも夫は私に指示してきました。私はずっとそれを受け入れてきたんです。命令だったら、もっと早い時期に反発できたかもしれませんが、断りやすい提案でもなく、反発できるほど厳しい命令でもなく、あたかも、最初から決まっていたかのような指示を、夫は私にしてきたんです」

 彼女がずっと従ってきた「指示」に、もしも従わなかった場合は、どんなことが起こったでしょう。夫は嫌みを言うのか、暴れるのか、否定するのか、無視するのか、さらに厳しい言葉が飛んでくるのか、どんなことが起こりますか。そういった場面はあったでしょうか。

「夫がリモートワークを始めてから、よけい細かくなったんです。私が買い物に行く時間帯も買い物の内容までも細かく指示するのですが、洗濯物を干してから買い物に行きたいと伝えると、それに対して彼は細かく否定してきました」

 細かい否定は、彼の確固とした考えに基づいています。

 ある時は今この時間帯に買い物に行くことの合理性を説き、またある時は昼食と夕食の食材を一度に購入することによって、昼と夜のメニューが重ならないよう考えることができると説く。さらには子供が登校した後に洗濯を始めるのではなく朝起きたらすぐ洗濯機に向かいなさいと説き、子供の学校の準備をもっと早くできるようすべきだと説き、朝食を終えたらすぐに昼食と夕食を考えるべきではないかと説く……。

 どこで仕入れた情報か、夕方買い物に行くとスーパーの残り物を購入することになるから、開店すると同時に最も新鮮な食材を購入するべきだと説くことも。

 こうした指示と共に、ふだんからなぜそうしていなかったのか、今後はさらに細かく指示出ししなければならないのかと、ため息をつきながら夫は長々と話すのだという。

「それを聞いていて、なんだか、ばかばかしくなっちゃったんです。あきれたようにため息をつきながらの指示を、なぜ私は受けなければならないのか疑問に思うだけでなく、なんだか、ばかばかしくなっちゃいました」

 結婚してからずっと、夫は家庭内のことは妻に任せていました。

 時々家計費のチェックはあったものの、家事も育児もすべて専業主婦の妻が担ってきました。夫は仕事が忙しくて疲れたと言うばかりで、子供のしつけや教育だけでなく、休日に子供と遊ぶこともほとんどありませんでした。

 ところが、コロナ禍でリモートワークとなり、夫が自宅にいることが増えたために起こった、夫から妻への細かい指示と細かい否定の連続が始まったのです。しかも、ふだん夫は家事をしていないため若干ずれた指示も多い。

「それは、ばかばかしいですよね」

 おもわず私が同意すると、彼女は深くうなずいて言葉を続けます。

「しかも、ですよ。私が彼の指示に従わないとなったら、『君はもっといい子だと思っていたのに反抗するんだね』って言うんですよ。ね、ばかばかしくてもう結婚生活を続けていくのもばかばかしくなりました」

 それで離婚を考えるようになったというわけです。

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