「餃子の王将」社長射殺事件、9年越しの捜査で工藤会系幹部を逮捕させた“吸い殻と人事”

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 誰もが知る中華料理チェーン「餃子の王将」を展開する、王将フードサービスの社長だった大東隆行さん(当時72)が“射殺”された衝撃的な事件が、実に、9年の時を経て大きな山場を迎えた。

 京都府警は10月28日に北九州市の特定危険指定暴力団「工藤会」系の幹部・田中幸雄容疑者を殺人容疑などで逮捕した。田中容疑者は2018年6月、大手ゼネコン「大林組」社員が乗る車に発砲したとして福岡県警に逮捕され、現在は福岡刑務所で服役中だ。

 事件が起きたのは、2013年12月19日早朝のこと。京都市山科区にある王将フードサービス本社前の駐車場に、自ら運転する車を停めて降りた大東さんは、次の瞬間、至近距離から4発の銃弾を撃ち込まれた。当時から取材を続ける記者によれば、

「大東さんは毎朝、車で出勤して本社前を掃除することを日課にしていた。犯人はそうした事情を調べた上で、犯行に及んだ可能性が高い。しかも、大東さんの車には百数十万円ほどの現金があったが、それは手つかずのままだった。当初から強盗目的ではなく、大東さん本人を狙った犯行と考えられていました」

タバコの“吸い殻”

 京都府警はこれまでに、現場から数キロの場所に乗り捨てられた逃走用の盗難バイクを押収し、そのハンドルからは硝煙反応が検出された。また、犯行直前に現場近くを走る不審な自動車も確認されている。

「この自動車は逃走用のバイクを盗む、あるいは現場の下見に使われたと考えられ、その所有者の交友関係から田中容疑者が浮上した」(同)

 同時に、京都府警が注目したのは現場付近で見つかったタバコの“吸い殻”だ。

「吸い殻から採取されたDNA型を調べ上げ、そのうちの1本から田中容疑者のものが検出されたのです」(同)

 果たして、この吸い殻は田中容疑者を“犯人”と特定する決定的な証拠となったのか。捜査関係者は次のように語る。

「犯行現場となった王将の本社は山科区の住宅街ですが、近隣住民から“銃声”を聞いたという話はごくわずかしか出ていない。犯行に用いられたのは25口径の自動式拳銃とされ、警察官が装備する38口径の拳銃よりも小型で、発砲時の反発や発射音も小さい。加えて、サイレンサー(消音装置)などをつけていれば、周囲に犯行を悟られづらい。さらに、細い道を走れて、渋滞にも巻き込まれづらいバイクで逃走を企てたことや、狙撃時に銃弾4発を全弾命中させていることから“プロ”の手口と考えられた。そんな犯人が、タバコの吸い殻を放置したことに疑問は残った。“捜査を攪乱するためではないか”、“真犯人が犯行をなすりつけるために、別人の吸い殻をわざと置いた可能性はないのか”といった声が上がっていたのは事実」

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