円安は国力低下のせいではない 今なすべきことは何か

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「円安対策ボーナス」を

 財務省・日銀の本音としては、円安の阻止よりも財政への追加負担を回避する方がプライオリティが高いのではないかと勘ぐりたくもなるが、日銀の長期金利抑制の解除を封印したままでは、政府の打つ手は限られる。

 日本政府の円買い介入の原資(2020年度末の外国為替資金特別会計の外貨建て資産)は約137兆円に過ぎず、為替介入をしても過度の変動を抑えることにしかならないが、円安による「痛み」を是正する手段はある。

 輸出力は落ちたとはいえ、円安のおかげで最近の企業業績は好調だ。直近の法人企業統計でも過去最高の収益を記録している。日本の家計全体の負担増は4.6兆円に上ると推計されるが、企業収益の伸びはこれを上回る勢いだ(約5兆円)。

 このような状況を踏まえ、渡辺博史元財務官は「企業は500兆円も利益(内部留保)を貯めており、(事業に)投資をしないなら、『円安対策ボーナス』として従業員に回すべきだ」と主張している(9月24日付東京新聞)。

 政府は補助金などでガソリン価格を抑制しているが、財源には限界がある。

 円安の効果をマイナスからプラスに転じさせるためには、その恩恵を享受する民間企業の協力が是非とも必要なのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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