年俸4年8億円、34歳「梶谷隆幸」は育成選手なのか 評論家が他球団への移籍を勧める根拠
億単位の育成選手
類似のケースと指摘されたのが、オリックスの新人投手・椋木蓮(22)だ。21年のドラフト1位、契約金1億円プラス出来高5000万円、年俸1600万円(金額は推定)で入団した、まさに将来のエース候補。ところが、椋木も今月17日、育成再契約を前提とした戦力外通告が告げられている。
「今季の椋木は、4試合に先発して2勝1敗。防御率1・02という成績を収めています。ところが、9月8日の西武戦に先発したものの右ひじの違和感で緊急降板し、その後、トミー・ジョン手術を受けたことが発表されました。来季はリハビリに専念することが確実視されるため、育成再契約を前提とする戦力外通知が行われたのです」(同・記者)
ちなみに梶谷も、ケガに泣かされてきた。2021年10月には腰の手術を受け、今シーズンを棒に振っている。
梶谷も椋木も1軍で好成績を残しているにもかかわらず、ケガを大義名分に育成へ“緊急避難”させられたのは事実だろう。そして巨人もオリックスも、FAによる人的補償の問題から非難されているというわけだ。
やはり、バリバリの1軍選手が育成枠に所属するのはおかしな話に違いない。特に梶谷は、億単位の契約が結ばれた選手だ。この制度が本来持つ趣旨とはあまりに違うと考える野球ファンは非常に多い。
育成は巨人の発案
TwitterなどのSNSを閲覧すれば、野球ファンの怒りは一目瞭然だ。ちなみに野球協約では、育成選手を以下のように定義している。
《支配下選手登録の目的達成を目指して野球技能の錬成向上およびマナー養成等の野球活動を行うため、球団と野球育成選手契約を締結した選手》
梶谷も椋木も、とっくに《支配下選手登録の目的》を達成した選手であることは言うまでもない。
野球評論家の広澤克実氏は「ルールには違反していないのかもしれませんが、育成制度の理念には反しています。野球ファンの怒りはもっともだと思います」と言う。
「育成選手制度は、巨人が主導権を握って実現したという経緯があります。制度の生みの親とも言うべき巨人が、その精神に反するようなことをしたわけです。まさに“皮肉”と言えるのではないでしょうか」
ちなみに育成選手制度は2002年11月、巨人の「前オーナー」という立場だった渡邉恒雄氏(96)が「支配下選手70人枠を増やすことを検討してほしい」と提案したことで協議がスタートした。
プロ野球実行委員会が制度のたたき台を作ったが、当初は広島が議論をリードしたと言われている。その後は、当時、巨人の球団代表を務めていた清武英利氏(72)が推進役を務め、2005年11月に正式導入が決まった。
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