岸田官邸が故・安倍首相を「政治利用」か 防衛前次官が異例の寄稿で訴えたかったこととは?

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ある政府関係者とは?

「安倍氏の申し出を拒否した岸田首相は島田氏の処遇を約束しましたが、浜田防衛相があっさりクビにしてしまった結果、首相がこれを拾う形で官邸でのポストを与えました」

 と、政治部デスク。そもそも島田氏の存在自体が政府内の綱引きの材料となっているようにもうかがえるが、それはともかく彼が敢えてメディアを通じて発信した理由は何なのか?

「確かに安倍政権時代、海保予算を防衛費に上乗せしようという動きはありました。ただ、それにはカラクリがあり、当時のトランプ米大統領が防衛費の大幅アップを要求してくるのは間違いないと見られていたので、見た目上、防衛費が増えたようにするため、海保予算を防衛費に加える工作を行ったことがあったようです。もっとも、実際に米側にその数字を見せることはなかったと聞いています」(同)

 ややこしいのだが、「海保予算の防衛費上乗せ」は決定事項ではなく、まして安倍政権がそのように望んだこともないということのようだ。となると、前述の「ある政府関係者」とは誰なのか。

「島田氏の前の防衛次官で、現在、官房副長官補を務める高橋憲一氏だと指摘する声がありますね。官邸で安全保障・危機管理を担当しています」(同)

防衛費アップをめぐる暗闘

 防衛次官経験者同士で路線が違うというのもなかなかよくわからない状況なのだが、ある官邸関係者に聞くと、こんな解説をする。

「高橋氏は公明党に近いのではないかと見るムキ少なくありません。ご存じのように公明党は防衛費アップについて支援団体・創価学会の主義主張との兼ね合いも合って、賛成しかねるところがある。ただ、海保予算に関しては公明党所属の斉藤鉄夫国交相の管轄なので認めやすいということはありますね」

 高橋氏が公明党・創価学会とどれくらい歩調を合わせているのか、あるいは全くそんなことはないのかは判然としないが、

「国際的な常識から防衛費の増額は不可避だとして、そのことについて海保予算での対応が可能なら実質的に防衛費は増えていないと内々には説明できる点もあり、公明・学会には好都合です。安倍元首相が反論できないのは言うまでもありません」(同)

 亡くなった元宰相を巻き込んでの、降って沸いたような政権内の暗闘。島田氏は寄稿によってそれを牽制しようとしたのではないかと見られている。

 たしかに島田氏の主張通りであれば、故・安倍首相が反論できないのをいいことに、勝手に政治利用しようとしているムキがいることになるわけで、看過できないのも当然だろう。

 ただ、この騒動にはさらに裏があるという見方もある。

 防衛省内の混乱を焚きつけ、歳出をできる限り抑制したいと考える財務省の狙いが背後にあるのではないか、という指摘もあるというのだ。その場合、高橋氏は濡れ衣を着せられた格好になる。

 日本の置かれた状況を見れば、安全保障政策は内輪もめのネタにすべきものではないし、そこに勝手に名前を使われることを安倍元首相が許すはずもないのだが……。

デイリー新潮編集部

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