岸田官邸が故・安倍首相を「政治利用」か 防衛前次官が異例の寄稿で訴えたかったこととは?
衝撃を与えた中身
島田和久前防衛次官(60、内閣官房参与)の産経新聞への寄稿が波紋を呼んでいる。ある政府関係者が「海上保安庁(海保)の経費を防衛費に計上するのは安倍晋三政権時に決まった」と説明していることを取り上げたうえで、これを全否定するものだった。異例の寄稿の背景には何があるのか?
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島田氏の寄稿は10月22日付。少し長くなるが、まずはその概要をお伝えしておこう。
1.NATOでは全加盟国がGDPの2%以上の防衛費を支出すると合意しており、日本政府も閣議決定している。日本はロシアだけでなく、北朝鮮、中国の3正面と向き合う。同盟国は米国だけだ。
2.しかし、この基準について、海保などの予算も防衛費に上乗せする方向だと報じられている。しかも「ある政府関係者」が、海保への上乗せは、安倍政権の時に決めた方針だと説明しているらしいと聞く。そのような事実はない。
3.「海保の予算は防衛に直接関係する経費ではない。しかし、いわば安全保障に関連する経費ではある」という当たり前の整理をしたことはある。
国際常識に外れた主張
概要紹介を続ける。
4.政府方針は「国家安全保障の最終的な担保となる防衛力の抜本的強化」であり、「その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する」ことだ。岸田首相は明確にそう述べているし、議論をすり替えてはならない。
5.「国家安全保障の最終的な担保となる防衛力」とは、侵略行為、すなわち武力攻撃を実力で阻止・排除する力だ。純粋な海上警察である海保はこれに当たらない。国際常識だ。
6.海保の予算を防衛費だとして上乗せするのでは、「水増し」とのそしりをまぬかれない。海保予算も防衛費だと言うのであれば、安倍政権の名前など出さず、岸田文雄政権の下での新たな判断として、正々堂々と説明してほしい。
島田氏は6年半にわたって安倍元首相の秘書官を務めた。防衛力強化は喫緊の課題だとして、次官任期の延長を亡くなる前の安倍氏自身が岸田首相に直談判したことでひと騒動に発展したこともある。安倍元首相は島田氏をそれだけ高く評価していたということだろう。
しかし結局、延長は認められず防衛省政策参与のポストをあてがわれたのだが、新任の浜田靖一防衛相の着任早々、その座を追われ、現在の内閣官房参与に収まっていた。
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