「捨てろ」「捨てない」で大げんか… 高齢者が子どもともめずに家を片づけるテクニックとは

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写真などは「思い出ボックス」に

 この順番で片づけを行っていくにあたり、大切な準備があります。それは仕分け箱を作ることです。薬、文房具、化粧品、書類……といった具合に分類し、出てきたものを機械的に各仕分け箱に入れていく。ものが出てくるたびに引き出しなどにしまっていたら時間が掛かって仕方がない。

 なかでも大事なのは、「思い出ボックス」という仕分け箱を用意しておくことです。写真、ホームビデオ、トロフィー、賞状、手紙……。こうした思い出の品々は、見つかるたびに文字通り思い出に浸り、手が止まってしまいます。多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。

 しかし、写真を見ていちいち昔を懐かしんでいたら片づけが終わるはずもなく、結局、家族との思い出話が弾むだけで、時間切れとなって片づけは途中放棄――これも「片づけあるある」のひとつです。ですから、写真などはとにかくまずは機械的に思い出ボックスに入れ、片づけの手を止めないようにすることが大きなポイントになります。

洗面所の「矛盾」

 また、私が重要視している場所は洗面所です。家の顔である玄関を見ればその家の片づけ具合が分かるといわれますが、私は洗面所こそ、その家の状態を最も表している空間だと考えています。

 多くの家では洗面所は脱衣所とランドリーを兼ねています。つまり、洗面所は複数の役割を果たしているわけです。従って、洗剤、バス用品、洗濯用品、歯みがき道具……と、ものがたまりやすい。そのわりに収納スペースは狭い。この「矛盾」をどうやって解決するか。洗面所を見れば、その人、その家庭の片づけ力、片づけ状態が分かるゆえんです。

 そして洗面所でよくお見掛けするのが、旅先のホテルから持ち帰った袋入りのシャンプーなどのアメニティーグッズをため込んでいるご家庭です。「いつか役立つかも……」と思い、取っておいている方が多いようですが、「いつか」は来ません。あとはカラの洗剤容器や使っていない歯ブラシや掃除ブラシなどもためがちです。こうしたものはしっかり捨てて、収納スペースを確保することが重要です。

 以上のようなノウハウを知った上で、単に捨てるだけではない片づけを進めていただければと思います。家がきれいになったはいいものの、必要なものまで捨てて大事な人生の思い出を汚してしまった……。これでは「本当の片づけ」とはいえないと思うのです。

安東英子(あんどうえいこ)
一般社団法人「日本美しい暮らしの空間プロデュース協会」理事長。1957年生まれ。家族7人が3LDKで快適に生活するための模様替えと大工仕事を自身で行ったことが話題に。「ソロモン流」(テレビ東京)では「片づけの賢人」と紹介される。約40年で全国5千軒のリフォームや片づけをサポート。『親の家の片づけ 決定版』等の著書がある。

週刊新潮 2022年10月20日号掲載

特別読物「『70代』『80代』が我が子と揉めないための『家の片づけ法』」より

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