「捨てろ」「捨てない」で大げんか… 高齢者が子どもともめずに家を片づけるテクニックとは

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子どもは親の荷物を根こそぎ処分したがるが…

〈こう説くのは、一般社団法人「日本美しい暮らしの空間プロデュース協会」理事長の安東英子氏だ。これまでに5千軒以上の片づけ・収納アドバイスやリフォーム等に関わってきた「片づけのプロ」である。

 70代、80代の親と離れて暮らす40代、50代の子どもが、久しぶりに親がいる実家を訪ねたら、あまりの「汚部屋」ぶりに愕然とする。そして子ども世代は、不要にしか映らない親の荷物を根こそぎ処分しにかかる。「片づけあるある」だ。

 しかし、「片づけの賢人」と称される安東氏はこの片づけ方に異を唱える。それは「本当の片づけ」にはならないと――。〉

処分に500万円かかるケースも

 確かに、親が実家の片づけを怠ったせいで、子どもが多大な迷惑を被(こうむ)ったという事例は枚挙にいとまがありません。実際、私が行っている片づけセミナーの受講生の中には、親が亡くなった後に実家を片づけようとしたら、自分の手には負えず、産廃業者を呼んで不要な家財を処分してもらうことになり、費用が500万円もかかってしまった方がいました。

 この例は極端にしても、親の遺品を整理・処分するのに数十万円使ったケースは珍しくありません。決して安くない費用を誰が負担するのかでお子さんたちがもめ、きょうだい関係が悪化することもあります。従って、高齢になったらできる限り家をきれいにしておく必要があるのは間違いありません。

 一方、子どもたちに言われるがままに家を片づける、すなわち何でも捨てればいいというものでもありません。

 先ほどの通帳の話が象徴的ですが、他にも別の高齢女性で、「これ、娘に捨てるように言われたんですけど……」と、私のところにアルバムを持って来られた方がいました。彼女は海外旅行が好きで、行った国ごとに整理して写真をきちんとアルバムに入れていた。しかし娘さんは、「こんなもの、お母さんが死んだら捨てちゃうよ。だから、今のうちに処分しておいて」と言い放ったそうです。女性は、自分の人生を否定された気持ちになってしまい、困って私のところに相談に来られたのです。ちゃんと使っていた服やアクセサリーまで子どもに処分されたと訴える方も多くいます。

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