官邸「機能不全」で急浮上する「岸田総理」自滅へのカウントダウン 自民党幹部も「非常に危険な状態」
危機管理ができない「チーム岸田」
間違いを即座に改めるのは、岸田総理らしい柔軟さともいえるが、この極めて重要な局面で簡単に答弁を翻すのは、総理大臣の資質にも関わる重大な失態だ。官邸関係者は「文化庁が用意していた、従来方針の答弁をそのまま読んでしまった」と説明しているが、自民党内からも厳しい批判が相次いでいる。
「あんな細かい法解釈の答弁は、岸田総理じゃなくて永岡文科相がやるべきだったよ。閣僚に岸田総理を守ろうという姿勢が見られない。それと、総理の秘書官たちもそうだが、松野官房長官がまったく機能していない。旧統一教会問題なんて危機管理なんだから、松野さんを中心に議論して整理するべきだ」
官房長官は本来総理の女房役として、危機管理に神経をとがらせ、霞が関に睨みを利かせ、体を張って総理を守る存在だ。その官房長官に岸田総理が、自らの周辺ではなく安倍派の松野博一氏を起用したことは、その忠誠心や実務能力から岸田政権発足当初から疑問の声があったが、その懸念が浮き彫りになった形だ。秘書官も含めたチーム岸田が機能不全になっているのは明らかだ。
いずれにしてもこの答弁の修正によって、岸田総理が旧統一教会問題の落とし所を解散命令請求に定めていることははっきりした。今後文科省が行う調査でどれだけ成果が上がり、過去の判例と合わせて裁判所が解散命令の判断を下す材料が集まるのか。岸田総理は自身の命運を賭けたことになった。
難航必至の与野党協議
もう一つの大きな判断が、旧統一教会の被害者救済法案を検討する与野党協議会の設置だ。岸田政権は当初、政府案を年明けの通常国会に提出することを目指して作業を進めていた。しかし予算委員会の審議で野党側に迅速な対応を迫られると、岸田総理は「今国会を念頭に準備を進めていく」と譲歩。さらにすでに救済法案を国会提出した立憲・維新の両党と、与野党協議会を設けることで合意してしまう。
参議院で野党が過半数を占める「ねじれ国会」でもないのに、重要法案の中身ついてこの段階で与野党が協議するのは極めて異例だ。野党の意見も取り入れていくことは、「聞く力」を標榜してきた岸田総理らしい姿勢なのかもしれない。ただまだ政府案は形になっておらず、野党側に主導権を握られるのは確実だ。安倍派の中堅議員は怒りを露わにする。
「野党案にある『被害者家族が本人に代わって献金の返金を申し出ることができる』なんて、個人の財産権の侵害になる可能性がある。こんなのたたき台にして議論はできない。公明党との関係も難しくなるよ。どうしてここで野党に譲歩しないといけないのか。安倍元総理が生きていたら、岸田総理を一喝するだろう」
一方で立憲民主党幹部はこう語る。
「野党案を与党が飲めばこちらが主導したとアピールできる。逆に与党が反発して、法案がまとまらなければ、岸田政権は被害者救済をやる気がないと責めることができる。どちらにしても与野党協議はこちらに得だ。普通なら与党が受けないけど、自民党は弱気になったね」
また協議を急ぎ過ぎることを心配する声もある。検討会の菅野志桜里弁護士はこう懸念を示した。
「救済法案は他の宗教団体や信者の行為まで対象となります。また荒削りな法律をつくると、再度、法のすり抜けによるいたちごっこも始まりかねません。ここは『今国会』という拙速な政治的目標に自縛され過ぎずに、救済の実効性があってかつ過度な制約とならないよう、丁寧にバランスをとってほしいです」
将来に禍根を残さない法案を、与野党の話し合いによってあと1か月ほどで作れるのか。岸田総理は重い課題を背負った形となった。
[2/3ページ]