「ヨシモト∞ホールの楽屋は超優良バイト案内所」 慶應卒のバイト芸人・ピストジャムが語る吉本芸人のリアルなバイト事情

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戦場を去る芸人の美学

 空が白んできて街が色づいていく様子を見ているのは気分が良かったが、3カ月もすると、二人とも「どうせ寝るならちゃんと布団で寝たいな」という結論になり、おたがいバイトをやめてしまった。ちょっとしたやりがいを見つけたり、仕事のうえで自分の成長を少しでも感じたりすることができれば続けられたのかもしれないが、今回はそれがなかった。

 おにぎりとはその後も、連絡が来れば深夜の公園で会ったりしていた。「俺らどんだけ公園好きやねん」と言うと、おにぎりはガハハと大きな声で笑っていた。

 2019年に、おにぎりは、吉本の社長さんが闇営業問題で会見を開いているさなか、突然ツイッターで、「16年芸人させて頂きました。ライブに来て頂いたり応援して頂いた皆様、本当にありがとうございました。直接ご連絡できませんでした、先輩の皆様、同期、後輩の皆様、たいへん申し訳ございません。今後は社会人として頑張ります! ありがとうございました」とつぶやいて芸人をやめた。

 僕にもなんの連絡もなかった。僕からも何も連絡しなかった。これは、戦場から去る芸人としての、おにぎりの美学なんだと思った。

 きっとこの最後のツイートは、両手を腰にあてて胸を張り、力道山のようなポーズをして、大声でつぶやいたんだと思う。

【ピストジャム】
1978年9月10日生まれ。京都府木津川市出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大学卒業後、こがけんを誘って吉本興業の養成所へ入所(東京NSC7期生)。2002年4月にデビューし、「マスターピース」「ワンドロップ」など、いくつかのコンビを経て、ピン芸人となる。ネットメディア「FANY Magazine」で「シモキタブラボー!」を連載中。アイドルのイベントMCなどでも活躍。下北沢カレーアンバサダー。かまぼこ板アート芸人。

デイリー新潮編集部

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