「勝つよりも楽しみたい」 バドミントン連続優勝・山口茜の強さに迫る(小林信也)

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「勝つ」より「楽しむ」

 パリ五輪への期待も高まるばかりだが、目下の悩みは何だろう?

「自分は試合が続くと勝負にこだわりきれない、大変になってきちゃう。アスリートとしての負けず嫌いは全然誰にも勝てないな、と。もちろん勝ちたいとは思いますけど、難しい。勝っても楽しめない時もありますし、プレーが楽しくできるのがいちばんいい。楽しければ結果もついてきます」

 そして言った。

「もともと世界で勝つことが目標じゃなかった。初めて世界ランキング1位の人とやった時も、その人に勝ちたいと思っていなかった。でもそのリー・シュールイさん(中国)とやった時、すごく楽しかった。うまいなあと思いながらラリーをしていました。自分がもっとやれたら、もっと楽しいだろうなあと。自分は低い展開が得意かなと思っていたけど、すべて上を行かれた。いろんなところで勝負したけど、全部上を行かれました」

 山口がバドミントンを続けるのはただ「勝つため」ではない。バドミントンで「より楽しむため」、強い相手ともっと高いレベルで打ち合い、感じ合い、快感と充実感を味わいたいからだ。

 9月18日、地元勝山で世界選手権2連覇の祝勝会が開かれた。荒天の中集まった市民に山口は言った。

「ゆるキャラとして身近な存在で居続けられるよう頑張りたいので、これからも温かく見守っていただけると、うれしいです」

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

週刊新潮 2022年10月20日号掲載

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