オリックス、日本一への“執念” イチローが躍動した1996年とつながる「歴史の糸」

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悲願達成への戦いが始まる

 セ・リーグの三冠王、ヤクルトの不動の4番・村上宗隆には、今季の交流戦3試合で本塁打こそ許していないが、10打数5安打の打率5割と、抑え込むことができていない。昨年の日本シリーズでは、6戦で2本塁打を浴びている。

 しかし逆に言えば、この“最大の敵”を封じ込めれば、26年ぶりの日本一は間違いなく見えてくる。昨年のシリーズも、6戦中5戦が1点差ゲームで、第2戦だけが2点差。今回も恐らく、僅差の競り合いが続くだろう。

 ヤクルトとの日本シリーズは、これが4度目だ。前身の阪急時代の1978年、知将・上田利治監督、そして仰木オリックスの1995年、そして昨年。3度のヤクルトとの戦いは、いずれもオリックスが敗れ、日本一を逃している。

「勝って終わるのと、負けて終わるのとでは、全然違いますから」

 吉田正尚の実感は、日本シリーズで負けた悔しさを味わった者しか分からない。日本シリーズという頂上決戦。日本一を逃すということは、その年、最後に負けるチームになるということと同義でもある。

 優勝したけど、最後に負ける。

 あの複雑な悔しさは、もうごめんだ。

 オリックスの本拠での試合は、10月25日の第3戦から27日の第5戦まで。つまり今回の「地元胴上げ」への条件は、4連勝、あるいは4勝1敗となる。

 第5戦なら、10月27日。26年前の日本一も「第5戦」、そして、昨季の無観客での優勝は「10月27日」。
 
 なにか、目には見えないが、どこか歴史の糸のようなもので、26年前の青波軍団と今年のオリックスが繋がっているように思えるのは、こちらのこじつけ過ぎだろうか。

 時を超え、26年ぶりの悲願達成への戦いが、いよいよ始まる。

喜瀬雅則(きせ・まさのり)
1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当として阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の各担当を歴任。産経夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。産経新聞社退社後の2017年8月からは、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)、「不登校からメジャーへ」(光文社新書)、「ホークス3軍はなぜ成功したのか」(光文社新書)、「稼ぐ!プロ野球」(PHPビジネス新書)、「オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年」(光文社新書)。

デイリー新潮編集部

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