オリックス、日本一への“執念” イチローが躍動した1996年とつながる「歴史の糸」
26年前と“同じ執念”
「ある意味、震災に対しての一つの目標、みたいなものがあったのかもしれませんね」
藤井の回想からも、ナインが同じ方向を向き、一体感が出ていたことがよく分かる。連覇への思いは「地元・神戸での胴上げ」という、明快な目標に込められていたのだ。
96年、オリックスがリーグ連覇を決めたのは9月23日、神戸での日本ハム戦。延長10回、イチローの左翼線を破るサヨナラ二塁打という、劇的な優勝決定のシーンだった。
日本シリーズでは、ミスタープロ野球・長嶋茂雄監督率いる巨人を4勝1敗で破り、第5戦の神戸で、今度は日本一の胴上げも実現させたのだ。
本拠地で、胴上げをやりたい――。2022年のオリックスナインも、まさしく、26年前と“同じ執念”なのだ。
四半世紀ぶりのリーグ優勝を果たした昨季、オリックスはすでに公式戦の全日程を終了しており、10月27日は、ロッテが敗れれば優勝という、相手の結果待ちだった。コロナ禍でもあり、試合のない京セラドーム大阪で、無観客での胴上げとなった。
日本シリーズは、コロナ禍でのスケジュール変更もあり、第6戦はかつての本拠地・ほっともっとフィールド神戸でのゲームとなったが、ここで敗れ、シリーズ敗退が決まった。
「今年はやり返したい」
連覇を果たした2022年は、シーズン最終戦での優勝決定。場所は仙台だった。
ソフトバンクが敗れての優勝決定とあって、勝った瞬間、マウンドで両手を突き上げた投手のもとへ、全ナインが駆け寄っていくという、あの歓喜のシーンも作れなかった。
「地元胴上げ」という最高の喜びと興奮を、昨季も、そして今季もまだ、オリックスは体現していないのだ。
「連覇、日本一を目指してやって来た。去年、負けたので、今年はやり返したい」
2位・ソフトバンクを、アドバンテージの1勝を含めた4勝1敗、第4戦でクライマックスシリーズ・ファイナルステージ突破を決めた10月15日、中嶋聡監督は勝利監督インタビューで、京セラドーム大阪の満員のファンの前で、そう力強く誓った。
「またこういう舞台に立たせていただける。やり返すチャンスがきました」
主砲で選手会長の吉田正尚の闘志も、燃え盛っている。今度こそ、やってやる。日本一への裏付けは、十分にある。
最多勝、防御率、奪三振、勝率の投手4冠を、史上初の2年連続で獲得した絶対的エース・山本由伸を軸に、2年連続2桁勝利の左腕・宮城大弥、今季自己最多の9勝を挙げた左腕・田嶋大樹の“3本柱”を擁する先発陣は安定している。
宇田川優希、山崎颯一郎、ジェイコブ・ワゲスパック、阿部翔太の「勝利の方程式」を形成する4人は、いずれも150キロを超える剛腕。2年目の宇田川は、今年の7月までは育成選手で、先発から今季途中にセットアッパーへ転向した山崎颯は、CSファイナルステージで、球団日本人最速となる160キロの大台に到達した。
さらに、来日1年目のワゲスパックも、シーズン当初は先発要員だったが、リリーフに転向後は安定した投球ぶりを見せており、2年目の阿部も度胸満点の投球ぶりで、平野佳寿とのダブルストッパーとして活躍した。
主砲・吉田正尚は、9・10月の打率.416、23打点、7本塁打をマークして、月間MVPを獲得、CSファイナルステージ4試合でも、打率.462、2本塁打と、好調ぶりをキープしている。
昨季の本塁打王、“ラオウ”こと杉本裕太郎は、シーズン中は不調に苦しみながらも、CSファイナルステージでは1本塁打、5打点の打率.385と、こちらも復調気配を見せるなど、打線の中軸を担う2人が、どっしりと構えている。
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