米国とロシアは本気で核戦争への準備を始めた… 人類の半数が死亡の最悪シナリオも

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米国の反応は

 米国の一般国民の間でも核戦争に対する警戒感がにわかに強まっている。

 米国では「ロシアとNATOが核戦争に突入したら、数時間以内に何百万人もの死者が出る」という恐るべきシナリオをリアルに示した動画が注目を集めていた(9月15日付ニューズウイーク)が、バイデン大統領の6日の発言(プーチン氏による核の脅しは冗談ではない。世界は冷戦終了以来初めて『世界最終戦争(アルマゲドン)』の危機にさらされている)が火に油を注いだようだ。10日に公表された世論調査によれば、「ロシアとの核戦争に向かいつつある」と回答した米国民は58%に達している。

 ネット上では「核戦争が起きても生存確率が高い米国の地域はどこか」を示すサイトが注目を集めている(10月14日付ZeroHedge)。それによれば、人口が少なく、重要な軍事施設が存在しないなどの理由から、メイン州やオレゴン州、アイダホ州中央部やカリフォルニア州北部などが挙げられている。

 米保健福祉省は7日、「核の緊急事態の発生後の人命救助のために急性放射線症候群の治療薬を2億9000万ドルを投じて購入する」計画を明らかにしたが、核戦争が起きてしまえば、まったく役に立たないだろう。

 米ラトガース大学は今年8月「米国とロシアの全面戦争という最悪のシナリオでは、人類の半数余り(約50億人)が死亡する」との研究結果を公表している。大気中の煤煙が日光を遮ることで農産物の生産が壊滅的なダメージを受け、世界的な饑饉による犠牲者は核兵器爆発による死者数をはるかに上回るとしている。いわゆる「核の冬」だ。

 キューバ危機発生から今月で60年が経った。「核の冬」が起きることを回避するためには、当時のように米ロが意思疎通を図ることが不可欠だ。国際社会は最大限の圧力をかけるべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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