ドラフト「サプライズ指名」は結局成功したのか? すぐに戦力外になったケースも
「原監督が気に入っている」
“サプライズ1位”といえば、2020年に西武から外れ1位で指名を受けた渡部健人(桐蔭横浜大)もそのひとりだ。この年は、早川隆久(早稲田大→楽天)や佐藤輝明(近畿大→阪神)に人気が集中していた一方で、渡部は1位どころか、外れ1位の候補としても、全く名前が挙がっていなかった。ただし、渡部は4年秋のリーグ戦でホームランを量産しており、吉住ほど“無名”だったわけではない。
当時、渡部を担当していたスカウトの話。
「(渡部は)早くから大学日本代表候補に選ばれていましたし、スカウトの間では名前の知られた選手でした。この年は、コロナの影響でなかなか実戦ができなかったうえ、オープン戦も不調だったので、一度評価を下げていました。ですが、秋のリーグ戦で活躍し、一気にスカウト陣の評価を上げましたね。特に巨人はスカウトに熱心だったみたいです。西武も動きを把握しており、(巨人に獲られないように)1位で指名したのではないかと言われています」
実際、筆者もまた、巨人の担当スカウトから「原辰徳監督が渡部をかなり気に入っている」という話を耳にしていた。プロ入り後の渡部だが、ルキーイヤーに二軍で19本塁打を放ち、一軍デビューを果たすも、今季は一軍出場が全くなかった。まだ、評価を下すことは早計といえるが、来年が“勝負の年”となりそうだ。
ソフトボール部出身者も
続いて、下位で“サプライズ指名”を受けた選手を見ていこう。阪神は、2004年に8巡目で当時15歳だった辻本賢人を、07年の大学生・社会人ドラフトでは、4巡目で野球部がないシャンソン化粧品の契約社員だった黒田祐輔をそれぞれ指名している。辻本は投手で、黒田は外野手である。
そして、さらなる“変わり種”として、世間を驚かせたのが、11年に日本ハムから7位指名された大島匠だ。新島学園と早稲田大でソフトボール部でプレーしながら、その打撃が関係者の目に留まって日本ハムの入団テストを受験。見事に合格を勝ち取った。ただ、残念ながら、辻本や黒田、大島はいずれも一軍の戦力となることなく、球界を去っている。
19年には米国のハワイ大から楽天の育成3位で指名された山﨑真彰(現在の登録名はマーキ)が話題となった。2年目の昨季は、二軍で高打率をマークして成長を見せたものの、今季は成績を落とし、オフには育成での再契約を結ばないことが発表されている。現役続行の可能性はあるが、その道も平たんなものではなさそうだ。
このように振り返ると、近年は“サプライズ指名”を受けた選手が実を結ぶケースは難しいといえるが、過去には、軟式出身の大野豊(1976年広島ドラフト外)が大投手となったほか、実家の工務店を手伝っていた田畑一也(91年ダイエー10位)がヤクルト移籍後に大活躍した例もある。
驚くような所属先から大出世を果たす……こうした話には何よりもプロ野球の夢が詰まっており、そんな物語を求めるファンも多い。果たして、今年のドラフト会議では、どんなサプライズが待っているのだろうか。
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