安倍元首相は「国賊」なのか 村上誠一郎発言を巡る報道で透けて見える朝日新聞の本音

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言動不一致の朝日

 そして10月12日に党紀委が村上氏に処分を下し、朝日新聞は13日の朝刊でその内容を報じた。冒頭で紹介した「『言論封じ』懸念の声も」の記事だ。

 記事の最終段には法政大学大学院の教授によるコメントが掲載され、村上氏に処分が下されたことに《多様な意見が党内で出なくなるのではないかと危惧する》と憂慮したことを伝えた。

 更に《閣僚経験者》が朝日新聞の取材に応じ、《処分するとは異例だ。言論を封じるような前例にしてはいけない》と指摘したと報じた。どうやら、この発言から「『言論封じ』懸念の声も」の見出しを採ったようだ。

 だが前出の自民党議員は、「そもそも朝日は『国賊』発言を把握したにもかかわらず、すぐに紙面では伝えませんでした。今さら言論封じを憂うとは片腹痛いですよ」と言う。

「9月22日になって初めて『国賊』の二文字を書いたということは、何らかの理由から自主規制してきたと言われても仕方ありません。そんな腰の引けた新聞社が、言論封殺などと言うのはおかしな話です。毎日新聞や東京新聞といった政権与党に批判的な社でも、朝日のような軽薄な紙面にはしませんでした」

書かなかった理由

 毎日新聞も10月13日の紙面で、《党関係者》が《自由闊達(かったつ)にものを言える党の雰囲気が失われてしまわないか心配だ》と取材に答えたことを紹介している。

 だが、記事の見出しは「自民党:村上氏、1年間役職停止 自民処分 『安倍氏国賊』発言で」と落ち着いたトーンにとどめた。

「自民党は昔も今も、自由に発言できます。村上さんが何度も安倍政権を批判してきたことが最大の証拠です。我々が苦い顔を浮かべざるを得ない発言もありましたが、それでも容認してきました」(同・自民党議員)

 今回、党内から異議が出たのは、「いくらなんでも死者に『国賊』は無礼だ」という常識的な観点からだという。

「そもそも朝日は安倍さんのことが嫌いでした。本音では、彼らも安倍さんのことを『国賊』だと思っていたのでしょう。しかし、村上さんの『国賊』発言を書いてしまうと、さすがに『無礼だ』という話になり、安倍さんの支持層を利してしまう。だから当初、書かなかったのかもしれません」(同・自民党議員)

デイリー新潮編集部

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