安倍元首相は「国賊」なのか 村上誠一郎発言を巡る報道で透けて見える朝日新聞の本音
朝日新聞が“言論封じ”などと言えた義理か──こんな声が自民党から出ているという。不評を買っているのは、10月13日の朝刊に掲載された「自民、役職1年停止処分 安倍氏を『国賊』、村上元行革相 『言論封じ』懸念の声も」の記事だ。
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【写真】「国賊」呼ばわりされた故・安倍元首相 若かりし頃、昭恵さんとの結婚式で。当時32歳
時事通信は9月20日、「安倍氏国葬を欠席へ=自民・村上氏」の記事を配信。自民党の村上誠一郎・元行革相(70)が、安倍晋三・元首相(1955~2022)を「国賊」と批判したことを伝えた。該当部分を引用する。
《安倍氏の政権運営が「財政、金融、外交をぼろぼろにし、官僚機構まで壊した。国賊だ」と批判した。党本部で記者団の質問に答えた》
記事には《記者団の質問に答えた》とあるが、この発言を20日に報じたのは時事通信だけだった。翌21日になっても多くの新聞社は、村上氏の「国賊」発言を紙面で報じることを見送った。
後で詳述するが、実は《記者団》の中に朝日新聞の記者もいた。その後の朝日の報道姿勢は不可解と言わざるを得ないのだが、まずは経緯をお伝えしよう。
村上氏の「国賊」発言は、安倍派だけでなく自民党内でもかなりの国会議員が問題視した。
10月12日、自民党は党紀委員会を開催。村上氏の発言は党員の「品位をけがす行為」だとして、1年間の役職停止処分を決めた。
村上氏は党紀委に「よく記憶はしていないが、不用意な発言でおわびして撤回したい」と文書で釈明。その後の記者会見で、安倍氏の遺族にも謝罪する意向を示した。
現場にいた朝日
ベテランの政治記者が言う。
「村上さんの選挙区は愛媛2区です。一説によると村上水軍の末裔だそうですが、村上家が素封家、地元の名家なのは間違いありません。曽祖父と父親が元衆議院議員、伯父が元参議院議員、祖父が元最高検察庁次長検事、妹が立憲民主党幹事長の岡田克也さん(69)の妻……という具合です。資金力は豊富で、連続12回当選と選挙にめっぽう強いことでも知られています」
村上氏は自民党内では無派閥。第2次安倍政権時から、繰り返し首相批判、政権批判を公然と行っていた。
確かに安倍氏は、毀誉褒貶が相半ばする政治家だった。とはいえ、凶弾に倒れた元首相を国賊呼ばわりとは、さすがに言い過ぎだろう──自民党の穏健派からも、こんな声が出たという。
自民党では、村上氏の発言は当然として、朝日新聞の報道姿勢も疑問視する声が上がっているという。ある自民党議員が取材に応じた。
「9月20日、党本部では、時事通信、朝日新聞、そして愛媛新聞の記者が、村上さんに取材していました。しかし、記事にしたのは時事通信だけだったのです。ちなみに、記者の全員がICレコーダーを持っていましたから、各社とも音声の“証拠”は持っているはずです」
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