安倍氏追悼演説が野田元総理になった舞台裏 本人は「話すことがないなあ」と苦悶

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「話すことがないなあ」

 そして追悼演説の先送りから2カ月。秋の臨時国会召集日が迫る中、高木氏はこんな放言で周囲を唖然とさせた。

「甘利さんの追悼演説の件、野党にお願いしないとな」

 再び甘利氏で調整しようという空気の読めない発言。国対トップの認識の甘さに危機感を抱いた国対委員長代理らは、水面下で野田氏への打診に踏み切った。ほどなく「受けたい役割ではないが、致し方ない」と前向きな感触を得るや、岸田文雄総理が直々に野田氏に電話をかけて内諾を取った。こうして追悼演説を巡るドタバタは決着を見た。

 一方、安倍氏を「仇(かたき)のような政敵だった」と振り返る野田氏。「安倍さんとは、あの(2012年に衆議院解散を宣言した)党首討論以外にほとんど接点がない。話すことがないなあ」とこぼし、苦悶しているという。

 野田氏の追悼演説は今月下旬の予定。政敵をも哀悼する議会の美徳として、国葬で深まった分断を埋める一助になるだろうか――。

青山和弘(あおやま・かずひろ)
政治ジャーナリスト 星槎大学非常勤講師 1968年、千葉県生まれ。元日本テレビ政治部次長兼解説委員。92年に日本テレビに入社し、野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップを務める。与野党を問わない幅広い人脈と、わかりやすい解説には定評がある。昨年9月に独立し、メディア出演や講演など精力的に活動している。

週刊新潮 2022年10月20日号掲載

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