城島健司、陽岱鋼…ドラフトを巡る大騒動で“笑った人”“泣いた人”

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ガッツポーズまで見せたのに

 最後は、競合抽選のくじをめぐる変遷を紹介する。当たり札には「交渉権確定」の文字が記されているが、05年の高校生ドラフトでは、外れ札に「NPB印」が付されていたのをソフトバンク・王貞治監督とオリックス・中村勝広GMが揃って勘違いしてしまう。

 王監督は、日本ハムと競合した陽岱綱(福岡第一)を、中村GMは巨人と競合した辻内崇伸(大阪桐蔭)をそれぞれ引き当てたと思い込む“とりかえばや物語”が起きた。

 地元福岡の球団で、“相思相愛”のソフトバンクに指名されたと思い、うれし涙を流した陽は、一転「何でこんなことになったんだろう」と落ち込んだ。これがきっかけで、外れ札は「NPB印」の代わりにドラフト会議の「ロゴマーク」が印刷されたものに変更された。

 ところが、またも勘違いが……。15年のドラフト会議。高山俊(明治大)の1位指名で、阪神と競合したヤクルト・真中満監督が、ロゴマークを「当たり」と勘違いしてガッツポーズを見せたばかりでなく、「慣れ親しんだ神宮球場で一緒に頑張ろう」と高山に呼びかけてしまう。

 直後、間違いが判明。今度は、阪神・金本知憲監督から「一緒に頑張ろう」とエールを贈られた高山は「本当に自分もよくわからない感じです」と戸惑うばかりだった。

 これを機に、外れ札はロゴマークのないまっさらな白紙に改められた。抽選くじをひとつとっても、システムが1度ならず変更されているのも、長い歴史を持つドラフトならでは、と言えるだろう。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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