阪神「ブラック球団」烙印逃れに藤浪「MLB挑戦」容認 巨人と競合でも岡田新体制に「浅野翔吾」が必要なワケ

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28歳はタイムリミット

 プロ野球阪神は10月17日、藤浪晋太郎投手(28)のポスティングシステムによるMLB挑戦を容認すると発表した。ポスティング移籍は現在、選手が海外フリーエージェント(FA)権取得前に所属球団から認められることで使える制度で、イチロー(マリナーズ)に始まり、松坂大輔(レッドソックス)、ダルビッシュ有(レンジャーズ、現パドレス)、田中将大(ヤンキース、現楽天)、大谷翔平(エンゼルス)ら、主に日本で頂点を極めた選手が同制度で海を渡った。だが、藤浪はここ5年でわずか12勝、今季も3勝5敗に終わった。異例の成績でMLBに挑むことに、球界関係者の間では「阪神が育成失敗のレッテル貼りから逃れる苦肉の策」との見方で一致している。

 藤浪は大阪桐蔭高時代にエースとして甲子園大会で春夏連覇を果たした。同学年の大谷翔平と双璧の逸材とされ、地元球団の阪神にドラフト1位で入団すると、いきなり10勝と実力を発揮した。1年目から3年連続で2桁勝利を挙げ、エースの座に就くと思われたが、制球難で長期低迷に入る。今季終盤に復活の兆しを見せたものの、完全復活とまでは言えない。しかも、来年4月には29歳となる。

「メジャーでは30歳になると、途端に評価が下がる。メジャー移籍を目指すには、今オフはタイムリミットだった。本人は昨オフに球団にポスティング移籍を希望したそうで、本来なら今季、好成績を残して行く方が、本人は契約額、球団も譲渡金を多く見込めたのだが……。これ以上は待てないということだろう。岡田(彰布)新監督の就任で、体制が一新されることも大きかったと思う」(MLBで活動する代理人)

藤浪が去っても優勝は可能

 長引くスランプゆえ、藤浪には再三、トレード説が浮上していた。

「阪神ではどれだけ手を尽くしても完全復活はできなかった。(中日で200勝をクリアした)山本昌さんを臨時コーチに招いたこともあったが、もう環境を変えるしかないという声は球団でも根強かった」(阪神球団職員)

 しかし、藤浪は高校時代に、阪神のホームの甲子園で高校球界のスターとなり、ドラフト最上位で獲得した特別な選手だった。

「球団には何としてもエースに育てる責務があった。途中までは順調で、後は絶対的なエースになるだけだったのだが……。このまま復活できないようでは阪神の育成能力に疑問符が付けられる。逸材をつぶしかけているだけに、大阪桐蔭だけではなく、アマチュア球界全体から入団を敬遠される雰囲気が既に出ている。トレードで放出したり、そのまま飼い殺しにしたりすることも結局、さじを投げたとアマ側の評判を下げる。メジャーしか選択肢がなかったのだろう」(在京セ・リーグ球団スカウト)

 阪神の投手陣は森木大智、湯浅京己、西純矢ら将来を嘱望される若手投手を多く抱える。岡田新体制でも展望は明るい。NPB球団元監督はこう指摘する。

「投手陣は藤浪の復活がなくても十分に優勝を狙える顔触れ。球団は岡田監督にも藤浪のポスティングを容認するかどうか話をしたはずだが、岡田監督は藤浪がいなくても困らないというのが本音だろう。逆にチームに残れば、復活させることが難題となる。それもなくなるため、藤浪のポスティング移籍が無事成立することを望んでいるはずだ」

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