ユニークな商品群をそろえて製粉から総合食品会社へ――前鶴俊哉(ニップン代表取締役社長)【佐藤優の頂上対決】

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パスタが定着した日本

佐藤 私は外務省時代、1986年から1995年までイギリスやロシアで過ごしました。日本を出る時にはまだ「パスタ」ではなく「スパゲッティ」という呼称がほとんどで、喫茶店でもミートソースか日本流のナポリタンしかありませんでした。でも戻ってみると、レストランから家庭の食卓まで、実に幅広いパスタの文化が生まれていて、非常に驚きました。

前鶴 いまは提携を解消しましたが、弊社は1982年にイタリアで最大手の会社と業務提携して、イタリアの食材や調理方法を日本に紹介してきました。そこから「ボンゴレ」や「カルボナーラ」といった多様なパスタの食べ方が広がっていきましたね。

佐藤 ソ連時代のロシアは、スパゲッティでもパスタでもなく、全部「マカロニ」でした。基本的に保存食、非常食の扱いで、貧しい人の食べ物だったんです。それがソ連が崩壊してロシアになると、高級なものも含めイタリアンレストランが次々とできていった。最初は敬遠されていましたが、5年ほどですっかり定着しました。おいしいものが入ってくると、食文化がガラリと変わる。それをモスクワでも体験しました。

前鶴 日本にパスタはすっかり定着しました。コロナ禍でも人が食べたいものは変わっていません。2020年の初頭、コロナがはやり始め、行動制限が行われると、外食に供する業務用商品は大きなダメージを受けました。でも一方で家庭用商品は売り上げが増えました。トータルではカバーしきれませんでしたが、明らかにパスタは外で食べられない分を家の中で食べている。いろいろ家計費の分析もしましたが、食べたいものは変わっていないとわかりました。だからきちんと原料を供給していけば、商売は続けられると確信した。

佐藤 業績はどうなりましたか。

前鶴 2020年はけっこう苦しかったです。2021年は業務用が戻って、その分家庭用に反動があったのですが、冷凍食品はそのまま良い状況で、さらに伸びていく感じもあったので、ほぼコロナ前の水準に戻せました。

佐藤 健康食品もありますが、そちらはどうですか。

前鶴 ヘルスケア関係は、マイナスですね。健康意識の高まりよりは、仕事がなくなるなど、経済的な要因が強く影響したと考えています。

佐藤 節約する部分になってしまった。

前鶴 どうしても値段の高いものから減らしていきますから。健康食品は、まだ以前の水準には戻っていません。在宅時間は長くなりましたが、普通にバランスよく食事をしていれば、不健康になるわけではないですし、健康食品より散歩するなど、運動する方に向かった気がします。

佐藤 ただ長い目でみると、伸びていく分野です。

前鶴 そうですね。病気を治すのは薬ですが、健康を維持するのは食品です。ですから会社としてはヘルスケアの商品はしっかりやっていきたいと考えています。

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