全てを知った妻の嘔吐にショックを受けて… 41歳夫が「ソウルメイト」と呼んだ女性との関係性は?

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「どこからが不倫か」を問うアンケートは多いが、その結果はだいたい似通っている。日本トレンドリサーチの922人を対象とした2022年の調査では「体の関係をもつ」が男性91.3%、女性が92.6%とトップだし、マイナビウーマンが実施した有効回答200件の調査でも、やはり肉体関係をもったら、というものが78.5%と最も多かった。

 また、法律的な「不貞行為」の定義は以下となっている。

〈民法七七〇条一項一号の不貞な行為とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない〉(昭和48年の最高裁での判例)

「身体の関係」「性的関係」の有無がひとつのポイントであることはどうやら共通している。

 では男女問題を30年近く取材し『不倫の恋で苦しむ男たち』などの著作があるライターの亀山早苗氏が今回取材した男性のケースは、はたして「不倫」なのだろうか。

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「性」への認識が複雑化している。自分を生まれながらの男性、女性と認識している人ばかりではない。体と性自認が一致していない人がいる。恋愛対象も同性だったり異性だったり。さらには人に恋愛感情を抱くかどうか、性的欲求があるかないかも人それぞれだ。

 性的指向がそうならば、性的嗜好ももっと複雑になっているだろう。かつて「覗き」が好きすぎてどうしようもないと嘆く男性に会ったことがある。ただ、「覗き」は明らかに犯罪。だから犯罪にならない、性的にさまざまな嗜好を持った人が集まるフェティッシュバーに通っていると彼は言っていた。

「そういう場がなかったら、僕は今ごろ、犯罪者になっています」

 そんなせつない告白が心に残っている。

 大人になってから、意外な自分の性の嗜好に気づいたという人がいる。

「僕は自分がごく普通の性的欲求をもっていると思っていました。妻子を大事に思っているし、失礼ながらアブノーマルな性に興味は持っていなかった」

 困惑したような表情でそう話すのは、松浦賢剛さん(41歳・仮名=以下同)だ。賢剛さんは4年ほど前、自分の「隠れた才能」を見つけてしまったのだという。

 首都圏に住む共働き家庭に生まれ、サッカーに夢中になった少年時代を送った。5歳年下の妹にとっては「頼れる兄貴」でもあったはずだと自覚している。大学を卒業し、そこそこ大手の企業に就職。それほど出世欲はないが、仕事は楽しんでやるタイプだから、職場でも友人関係は広いと自己分析する。

「つまりはどこにでもいる、陽気な兄ちゃんキャラだったと思います」

 30歳になる年に、2年ほどつきあっていた同期の絵梨さんと結婚。子どもがふたり生まれ、絵梨さんは退職して一時期、専業主婦となった。現在、子どもは10歳と7歳。絵梨さんは週に3回ほど、パートに出ている。

「子どもはかわいいです。自分が育休をとらなかったのが今でも悔やまれます。今は男性社員もとれるようになったけど、僕のころはまだむずかしかったから」

 それでもできる限り、子育てに関わった。学生時代からひとり暮らしだったので、家事もお手の物だ。そもそも母親も働いていたため、小学校3年生くらいのときから妹に夕食を食べさせるため料理をしていたという。

「僕の母は家事が苦手だったんです。洗濯くらいはするけど、掃除は父がやっていたし、料理もほとんど父。それを10歳から僕が担当するようになった。食材は母が買っておいてくれるので、あとは父に聞いたり料理本を見たりしながら作っていました。まあ、男だから女だからということにまったく縛られていない両親でしたね。というか、苦手なことはしなくていいと父も思っていたようです。店屋物やテイクアウトの夕飯もざらにありました。それでも両親は仲がよかった。そんな家庭が普通だと思って育ちました」

 妻の絵梨さんは、どちらかといえば男女の役割にこだわっている。こだわるというより、自分が育った家庭が「標準」だと思っているのだろう。賢剛さんも、自分の家庭が標準だと思っていたが、それは中学時代、友人の家庭に行ったときに「そうではなさそうだ」と気づいていた。

「絵梨の育った家庭はお父さんがサラリーマンで、お母さんは専業主婦。絵梨には兄がいる核家族。まあ、戦後の典型的な家庭です。お母さんがよくクッキーやケーキを焼いてくれたそう。だから彼女自身もそういう家庭を作りたかったみたい。とはいえ、今の時代、これからの教育費などを考えたら、僕だけの給料ではやっていけない。だからあえてパートに出ているんだと思います。ちょっと心苦しいと思わないでもないけど、僕は本来なら、絵梨にもフルタイムで仕事をしてほしかったから、まあ、妥協点で落ち着いたという感じですね」

 ともあれ、家庭的には何の問題もなかったのだ。賢剛さんが「あの世界」に出会うまでは。

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