サハリン1はなぜ日本に不可欠なのか

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事業移管での期待

 日本のLNG輸入にも警戒すべき兆しが出ている。

 日本にとって最大のLNG輸入国である豪州でLNG輸出規制の動きが起きている。豪州政府が9月末にLNG輸出規制を見送ったことで事態の悪化は回避できたが、今後も予断を許さない状況が続くことが予想され期待る。

 輸入第2位のマレーシアでも問題が発生している。10月に入り、国内の生産設備の主要なパイプラインでガス漏れのトラブルが発生、この問題が長期化すれば、日本へのLNG供給に支障が出るリスクが生じている。

 輸入第3位のカタールからの安定供給もおぼつかなくなっている。深刻な天然ガス不足に悩むドイツなどが猛烈な購入攻勢をかけていることから、今後輸出先が変わってしまう可能性は排除できない。

 世界規模で天然ガスが不足する中、余剰生産能力を有するのはロシアのみだと言っても過言ではない。ロシアからパイプラインで欧州地域に輸送されていた天然ガスの流れが大きく変わり、LNGの輸出も大幅に増加することは間違いない情勢にある。

 エクソンモービル撤退後のオペレーターは不明だが、筆者は「今回の事業移管でサハリン1の天然ガスをLNGで日本に輸出する道が開けるのではないか」と期待している。

 このように、厳しさを増す日本のエネルギー安全保障にとって、サハリン事業の重要性はますます高くなっていると言えるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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