スリランカ現職閣僚が語る、中国の“反社”的なワナ 「日本は世界で最も信頼のおける友人」

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 途上国に過剰な資金を貸し付けて返済不能に陥らせ、“借金のカタ”として重要インフラを奪い取る――。

 経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国の対外融資は「債務の罠」と指摘される。経済的に相手を屈服させる反社まがいの手口で、ワナに陥ったスリランカは国家破産の危機に直面している。

「わが国が陥っている経済的状況の責任を、どこか特定の国に帰すことはしたくありませんが、前大統領をはじめとする政治家たちが中国から返済不能な巨額の資金を借り入れてしまった。あくまで彼らが、国の発展より自分たちの利益を優先した結果なのです」

 とは、7月に誕生した新政権の閣僚で、ウィクラマシンハ大統領を支えるナーナーヤッカーラ労働・海外雇用大臣だ。

国家予算を上回る資金を中国から借金

 スリランカが抱える対外債務はおよそ510億ドル(約7兆4千億円)に達し、対中債務はその1割以上に相当する約65億ドル(約9400億円)とされる。スリランカの2022年度推定政府歳入は2兆2230億スリランカ・ルピー(約8892億円)だから、国家予算を上回る資金を中国から借りていることになる。

「前政権は、その借入金を国内の雇用や利益の創出に直結しないインフラ整備にも費やしました。当時は将来的に必要になると考えたのでしょうが、いまはまったく不要なものが少なくありません。これは致命的な判断ミスでした」

 表向き、中国マネーによる恩恵は多大だ。が、13年に完成したマッタラ・ラジャパクサ国際空港は“世界一空いている空港”と呼ばれて閑古鳥が鳴いており、14年に北西部に完成したノロッチョライ火力発電所では不具合が相次いでいる。

 南部で最大級のハンバントタ港はいまも工事が続くが、17年には返済計画の頓挫により中国が99年間もの運営権を手にしている。大臣の指摘は、こうした実情を踏まえたものに他ならない。

「融資の100%がインフラ整備に使われたかといえば、そうでなかった可能性があります。前大統領たちには、資金の一部で私腹を肥やしていたとの疑惑が残されているのです」

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