タクシーで吐くのは9割が女性!? 俳優兼業ドライバー「平山大」が語るコンビニ利用術
郊外は「コンビニ経由」、都心は「コンビニが目的地」
渡辺:仕事で東京外に移動することもありますか?
平山:もちろんです。僕の仕事時間は夕方から翌日の昼頃までで、とくに深夜帯は終電を逃したお客さんが多いですからね。目的地が神奈川や埼玉などになることもあります。深夜の郊外だと、営業中のお店が少ないので、お客さんを降ろしたあとに休憩する場合はよくコンビニを利用しています。
渡辺:郊外ならば駐車場もありますからね。もしも、今の日本みたいに至る所にコンビニがない状況だったら、どうしますか?
平山:自販機で飲み物を買って、路駐で仮眠することになりそうです。そう考えると、やっぱりコンビニはありがたい存在ですね。
渡辺:郊外に帰宅するお客さんから「途中でコンビニに寄って」と言われることは?
平山:よくありますよ。郊外に帰るお客さんは一度コンビニに寄ることが多いです。一方、都心だと「あのコンビニで降ろして」と目的地がコンビニになるケースが目立ちます。
渡辺:なるほど。郊外は自宅とコンビニが離れている人も多いから「コンビニを経由」して、都心はコンビニから自宅まで近いから「コンビニが目的地」になるわけですね。コンビニを経由した場合、お客さんから差し入れをもらうことは?
平山:ときどきですが、あります。乗車中に会話が多いお客さんは、差し入れをくださることが多いです。
渡辺:チップをくれるお客さんもいますか?
平山:差し入れ同様、会話が弾んだお客さんはチップ率が高いですね(笑)。チップと言えば、以前、沖縄から来たという上品な老夫婦を乗せたとき「二千円札」のチップをいただいたことがありました。
渡辺:二千円札の表面は首里城の守礼門ですよね。地元愛に溢れたチップですね。素敵なお話を聞いたあとで申し訳ないのですが、女性のお客さんから口説かれることとかあります? ほら、平山さんカッコイイから。
平山:ないですよ(笑)。たまに、酔った女性から「お兄さんの家まで」的な冗談を言われることはありますけどね。
渡辺:やっぱり、そういうときは連れて帰っちゃうんですか?
平山:しませんよ(笑)。そういう方はかなり酔っているので、むしろ吐かないかどうかが心配です。
渡辺:車内で吐いてしまうお客さんって、やっぱりいるんですか?
平山:……いますね。車内で吐いてしまうのは、9割が女性です。
渡辺:9割が女性ですか!?
平山:おそらく恥ずかしさが先行するんでしょうね。「吐きそうだ」と言い出せずに、ギリギリまで耐えて、我慢できなくて車内で吐いてしまう。男性の場合、吐くときに「ちょっと停めて」と外で吐くことが多いんです。
渡辺:車内で吐かれてしまうと、もう事務所に戻るしかないですよね?
平山:タクシー専用の洗車場がありまして、そこで清掃してもらいますが、やっぱり臭いが残るので車は交換になります。
渡辺:清掃代はお客さんに請求できるんですか?
平山:法律上、賠償請求はできるらしいのですが「迷惑料」などの名目では請求できません。基本的に交渉ですが、お客様もかなり酔っていることが多いので難しい。チップとして受け取ることはありますけどね。何も受け取れなかった場合、洗車代はすべて自腹です。とは言え、洗車代はそれほど高くありません。2500円程度でしょうか。
渡辺:でも、洗車している時間は営業ができない。
平山:そうなんですよ。深夜料金の稼ぎ時に吐かれることが多いので、僕としてはその方が問題です。つい最近も車内で吐いてしまったお客さんがいました。郊外だったので、コンビニの駐車場でお客さんを降ろして、僕はそのまま駐車場で清掃しました……。
渡辺:吐きそうなお客さんは分かります? 乗車拒否できないんですか。
平山:吐きそうなときは停めればいいんですけどね。ただ、このときは高速道路を走行中に吐かれてしまったので停車しようがなかったんです。
渡辺:それは大変でしたね……。これまで、いろいろなお客さんを乗せてきたと思いますが、そうした経験が芝居に活かされることはありますか?
平山:自分とは異なるタイプの人は参考になります。車内で怒鳴りながら電話している会社員の声を聞きながら、「なるほど……こういう怒り方をする上司とかいるんだな……」と(笑)。
渡辺:僕もタクシーで電話しているときは口調が荒くなるかもしれない。なんでだろう。本音が出やすい空間なのかな?
平山:わかります(笑)。
渡辺:しばしば「コンビニは社会の縮図」と言われますが、タクシーの車内も社会の縮図ですね。多種多様な業界のリアルな人間模様が垣間見られそうです。
平山:そうかもしれません。コンビニとタクシーの意外な共通点ですね(笑)。