「岸田首相」肝いりの「電気料金抑制策」は絵に描いたモチか? “補助金”バラ撒きでは「値下げ」が難しい理由

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“倒産危機”にあえぐ電力業界

「電力業界には燃料の価格変動分を電気料金に反映させる燃料費調整制度がありますが、それでも吸収できないほどの値上がり幅になっているのが現状です。燃料費調整額についても、利用者の負担が青天井にならないように多くの電力会社で上限が設けられていましたが、あまりの急激な高騰に“経営が持たない”と、新電力をはじめとして次々と撤廃に動いています」(山本氏)

 すでに燃料費だけで1kw時あたり20円に迫る水準というが、LNGと石炭の価格は今後も上昇していくと見られている。

「国から支給されたお金をそのまま価格抑制に回すだけでは電力各社の赤字解消に繋がらず、予測される“倒産危機”の連鎖を止めることはできません。実際、経営不振から支給金の一部を資金繰りに流用する会社が出てきても不思議でないほど、いまの電力各社を取り巻く状況は厳しさを増している。そんななかにポンっとお金を放り込んでも上手く行くはずがありません。政府として出したお金が全額“価格抑制”へと回るよう、円安への対処やエネルギー調達外交の展開などもセットで行うことが重要です。電力各社の経営健全化へ向けた環境整備にも手を付けなければ、政策の実効性は担保され得ないのではと懸念しています」(山本氏)

ドイツは28兆円を支出計画

 カネを出したら万事解決とならないのは無論だが、その投入額がいくらになるかも無視できない。

「値上げ後の電気料金の総計は年間約20兆円に及ぶともされ、1割値下げするには単純計算で2兆円かかることになる。今年9月、ドイツ政府は国民の生活改善と企業など産業支援のためにエネルギー価格抑制策として28兆円(2000億ユーロ)を投じる計画を発表しました。詳細についてはこれからですが、補助金を投入してガスや電気料金を下げるといった内容になると伝えられます。しかし、これほどの巨額支出はおそらく日本では真似できないでしょう。ならば、よほど効果的な手を打たないと支出額に比して“高止まり”の電気料金を据え置くのが精一杯といった中途半端な結果に終わりかねない」(山本氏)

 電気料金だけでなく、物価高は広い範囲で起きており、支出増に苦しむ国民の生活は待ったなしの状況に追い込まれつつある。本当に負担軽減に繋がるのか、岸田政権の浮沈が懸かっている。

デイリー新潮編集部

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